2024年7月18日、日本財団は、陸上より遠隔で複数船舶の航行を支援する「陸上支援センター」が、古野電気社屋内(兵庫県西宮市)に完成したことを発表した。

 陸上支援センターでは、2025年7月から順次実施する実証実験において、4隻同時に無人運航船の遠隔航行支援を行う予定だ。

写真:複数の人がモニターを確認する様子
陸上支援センターでの業務の様子

 日本財団は、2020年2月より無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」を推進している。同プロジェクトの第1ステージでは、2022年1月から3月にかけて、6隻の船舶の無人運航実証に成功。現在進行中の第2ステージでは、実証実験だけでなく社会実装への対応を目指しており、2040年に国内を走る船舶の50%を無人運航化する目標の達成に向けて事業を進めている。

写真:席に座りモニターをチェックする航海士
航海士が個船を監視する様子

 無人運航船は、船舶の事故の減少や海運の人手不足の解消など、さまざまな課題の解決につながるものとして研究・開発が進んでいる。

 同財団は今後も、国内物流の40%を占める(※1)内航海運業界の船員不足や高齢化、船舶の事故といった課題を解決し、安定的な物流の維持を実現するため、国内における無人運航船の技術開発・実装とさらなる社会的理解を醸成する取り組みを進めるとしている。

※1 国土交通省「貨物輸送の現況について」(2023)

無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」

 第1ステージでは2022年1月から3月に船舶交通量が多い海域(輻輳(ふくそう)海域)である東京湾での実証や、長距離・長時間(12時間以上)の無人運航実証を実施した。現在は第1ステージの知見を活用し、瀬戸内海を結ぶ離島航路船や生乳・農畜産物を運ぶRoRo船の商業運航時における実用化を目指している。2025年度から開始する4隻の船舶での社会実装に向けた無人運航実証を経て、2040年には50%の船舶を無人運航化することで、船員不足の解消や船舶の安全性の向上を目指す。

図版:MEGURI2040のロードマップ。2020~2022年:第1ステージ 技術実証、2023~2025年頃:第2ステージ 社会実装(進行中)・実用化、2040年頃:50%の船舶の無人運航化

無人運航システムにおける陸上支援センターの役割

 無人運航システムは、①自律機能を担う「船舶」、②陸上から船舶を航行支援する「陸上支援」、③通信回線と情報管理制御等を担う「通信(衛星通信)」で構成されている。MEGURI2040の第2ステージでは、今回の常設型に加え、移動型の陸上支援センター(10月完成予定)の2か所で複数の船舶の遠隔航行支援を行う。

図版:衛星通信を使って陸上支援センターが複数の船舶の遠隔航行支援を行う様子

陸上支援センターの機能

 第1ステージでは、往復距離790kmで、無人航行システムの稼働率は往路97.4%、復路99.7%と高い数値を達成したが、1か所の陸上支援センターで1隻のみの遠隔支援に留まったことなどオペレーション面の課題があった。今回完成した陸上支援センターでは複数の船舶の遠隔航行支援が可能な設備を整備し、2025年から開始する実証実験では4隻の船舶を遠隔で同時に航行支援する。

図版:陸上支援センターの機能(フリート監視ブース、個船支援ブース(航海系)、個船支援ブース(機関系)、ブリーフィングテーブル、ワーキングテーブル、オフィスラウンジ)