人機一体は、家族型ロボットLOVOTや電動バイクzecOO、零式人機のデザイナー根津孝太氏 、マクロスシリーズやアクエリオンシリーズ等のアニメーション監督・デザイナーの河森正治氏による「人型重機(ロボット)」の共同開発プロジェクト開始を2024年7月に発表。2024年8月に開催した成果発表会において、根津氏作成の「零一式人機」コンセプトモデル、河森氏作成の「一零式人機」のコンセプトスケッチを初公開した。

河森正治氏作成「一零式人機」コンセプトスケッチ、根津孝太氏作成「零一式人機」コンセプトモデル

人機一体のオレンジライン

 同社は2021年より根津氏と連携し、人機一体のトータルデザインプロジェクトを推進。先端ロボット工学技術を組み込んだ汎用人型重機の社会実装に取り組んできた。

 人機一体は、人間が機械を自分の身体の延長のように自在に扱うことで、人間と機械の相乗効果を生み出し、人間だけでも機械だけでもできない作業の実現を目指している。

 そのための技術として、「力制御・トルク制御技術」「パワー増幅バイラテラル制御技術」による人間と機械の「双方向の力の伝達」をオレンジラインとして可視化し、関節部の丸などの部分においても、単なる装飾ではなく構造としての意味を付与している。

コンセプトスケッチ
人機一体のオレンジライン(根津孝太氏作成コンセプト)

 JR西日本、日本信号と共同開発した「零式人機 ver.1.2」「零式人機 ver.2.0」にもオレンジラインの意匠を反映。根津氏と人機一体の機械設計エンジニア野村方哉氏が共同設計し、産業機械としての実用性と機能美を兼ね備えたインダストリアルデザインとなっている。

写真:零式人機 ver.1.2の外観
零式人機 ver.1.2
写真:零式人機 ver.2.0の外観
零式人機 ver.2.0

零一式人機 コンセプトモデル

零一式人機 コンセプトモデルの外観
零一式人機 コンセプトモデル
脚部、腰部
人機並進駆動ユニット搭載部分

 零一式人機(れいいちしきじんき)は、同社のハードウェア技術と、零一式カレイドのハイブリッドオートバランス制御技術を統合し開発する人型重機。

 コンセプトモデルでは、根津氏によりインダストリアルデザインとしての「実現可能な機械構造」が可視化され、人機一体の力制御技術を実装する上での基礎設計となる。

 重機に相応しい大出力化と、そのための大型化を目指すための工夫が随所に為されている。脚部の電動シリンダーは、同社が椿本チエイン、タダノと共同研究開発を行う「人機並進駆動ユニット」技術を用いて大出力化と繊細な力制御が可能で、「腰のスキル」を実現する。

 胸部にはサブアームを搭載し、2対4本の腕を用いて複数人分の作業を一機で行うことができる。

一零式人機 コンセプトスケッチ

一零式人機コンセプトスケッチ

 一零式人機は、零一式カレイドに高所作業機能を追加した人型重機。高所作業のため原則として人間サイズを想定しているが、人型重機として大出力なので、歌舞伎の隈取のような「異形感」を与えることによって力の強さを表現し、安易に近づくと危険であることを示している。

 また、人間のように各種ツールを効率的に使い分けるため、ツールチェンジャーとツールマガジンを装備することができる。

 さらに、河森デザインの真骨頂である変形・合体要素をインダストリアルデザインとして昇華させ、複数人分の高所作業を一機で行うことが可能となる(変形・合体の詳細は未公開)。

各者コメント

野村方哉氏

 人型重機などの設計において、機構・素材・製造方法などを考慮した機能美を追求したデザインを、根津孝太様と進めてきました。特に3Dプリンティング技術の活用により、設計および意匠性の自由度を大きく拡張しました。近年では、ストラタシス社の3Dプリンタ「Fortus 450mc」 等を活用し、FDM(熱溶解積層方式)などの3Dプリント方式のメリット・デメリットを考慮した設計のチャレンジを進めており、更なる機能美を目指しています。
 これまで得た知見と更なる技術革新を進めることで、零一式人機および一零式人機が様々な苦役の解消に活躍するとともに、未来のエンジニアそして実際に操作する方々が憧れるような人型重機となるようにしていきたいです。

根津孝太氏

 成果発表会にて、みなさまから大きな反響をいただき、人機一体がかかげる「あまねく世界からフィジカルな苦役を無用とする」というビジョンの達成に向けて、確かな一歩を踏み出せたと感じています。これまで野村方哉氏と一つひとつ丁寧に積み上げてきた「人機一体トータルデザインプロジェクト」は、新たな進化の局面に進みます。そして、河森正治監督をプロジェクトにお迎えし、人機プラットフォームの今後の発展が、さらに加速してゆくことを確信しています。

河森正治氏

 人型ロボットが社会実装されていく記念すべき成果発表会。新時代の幕開けとも言えるセレモニーにメンバーの一人として参加出来たことは、大変光栄なことでした。
 私にとって、初めての作業用インダストリアルデザイン。
 今回発表のコンセプトスケッチは、SF的な世界と、リアルワールドを繋ぐ挑戦的なプロローグになっています。
 ぜひ、これから始まる人機一体チームのデカルチャーなプロジェクトにご期待ください!

3人の集合写真
左:根津孝太氏、中央:野村方哉氏、右:河森正治氏(成果発表会 2024)