2024年7月17日、人機一体は、同社のロボット工学技術を搭載した「多機能鉄道重機」が、同月より西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)営業線での鉄道設備メンテナンスに導入されることを発表した。

写真:線路上の「多機能鉄道重機」

 JR西日本、日本信号、人機一体の3社が共同開発した高所重作業ロボットのPoC試作機「零式人機 ver.2.0」をベースとしており、同試作機に使用している人機一体の特許技術等のライセンスを日本信号に提供して製品化された。

 ブームの先端に人型重機が搭載されており、作業者は安全な場所に設置された操縦席から人型重機を遠隔操作することで、危険な高所に登ることなく作業を行うことができる。

 多機能鉄道重機は、鉄道設備メンテナンスにおける高所重作業を解消し、生産性、安全性の向上を図ることを目的として西日本電気システムが運用する。人機一体は、電力や土木等の他分野での応用に向けた研究開発を進めるとしている。

左:ベースとなった「零式人機 ver.2.0」、右:「多機能鉄道重機」(提供:JR西日本)

多機能鉄道重機 概要

 多機能鉄道重機は、人に代わって重作業を行う人型重機(ロボット)部分と、人型重機を支え広範囲移動を担うブーム、人型重機とブームの操縦装置を備えた操縦室、道路と線路の両方を走行できる鉄道工事用車両で構成されている。

写真:開いた扉から操縦室内の操縦桿が見える。
操縦室

 独自のロボット工学技術により直感的な操作が可能。塗装や伐採など多様な作業に特化したツールを装備でき、最大40kgの重量物の把持や、高所作業(12m)を遠隔操作で行う。VRゴーグルを通してロボット目線で作業を実施できる。

 当面は架線支持物の塗装や支障樹木伐採に使用するが、今後もJR西日本がツール開発を継続し、対象作業を拡充していく。

 今後、鉄道分野に限らず他分野の高所重作業の機械化に向けて多機能鉄道重機の展開を目指す。また、人機一体は、高所重作業の機械化に対する取り組みとして、土木分野では竹中土木、電力分野では東北電力ネットワークと共同研究開発を進めており、順次実証試験を行う予定だ。

写真:人型重機の腕部分を使い塗装を行う様子
架線支持物を塗装する様子