2024年9月11日、三菱重工機械システム(以下、MHI-MS)は、自動車を自律的に運搬する車両搬送ロボットについて、市場拡大の強みとなる基幹特許2件の国内登録を完了したことを発表した。

 2019年から出願を開始した特許登録が実現したことにより、自動車メーカー工場やモータープール、港湾ふ頭などにおける完成車自動搬送や、ショッピングモール、テーマパーク、空港などで車両搬送ロボットが駐車を代行する自動バレーパーキングなどの用途で、同社の市場競争力や事業的優位性が高まったといえる。

写真:車両搬送ロボットの外観
写真:車両を運ぶロボット
車両搬送ロボット

 今回登録を終えた基幹特許は、「4つのホイールを有する複数の車両を移動させるための運搬装置」「監督者による自律型駐車ロボット集団の管理方法」。

 この技術により、多様な車長・ホイールベースに合わせて伸縮することができるプラットフォーム、およびプラットフォームに格納されているアームが展開し、4輪のタイヤをやさしく支持することにより、車体に触れることなく自動車を持ち上げ搬送することができるロボットを実現した。

 これらのサービスを展開するには、複数の車両搬送ロボットを高度に管理・制御する必要があり、今回の特許登録技術である“全体最適”を実現する管理ソフトウェアを用いている。

 車両搬送ロボットを用いたアプリケーションは、完成車自動搬送においては、物流業界の人手不足や労働環境改善、脱炭素化といった課題を解決し、自動バレーパーキングでは、敬遠されがちな遠くの駐車スペースを“近く”に変え、ユーザーの利便性向上を実現する。

 MHI-MSのパートナーでフランスのベンチャー企業スタンレーロボティクスにより、すでにそれぞれのユースケースでの商用化を開始している。2022年6月、日本国内商業施設で車両搬送ロボットによる搬送性能の検証ならびに利用満足度の評価(フェーズ1)、同年11月には、スマートフォンアプリによる入庫・車両搬送・駐車・出庫までの全過程無人化(フェーズ2)の自動バレーパーキング実証試験を完了。2024年2月には、カーボンニュートラルポートを推進する愛知県の支援を受け、完成自動車の輸出入量が多い三河港の蒲郡ふ頭地区において、車両搬送ロボットを活用した完成車自動搬送の実証試験を実施している。

 MHI-MSは、同技術と三菱重工グループの交通流監制技術、無人システム監視・管理技術、機械式立体駐車場のサービス網などを組み合わせ、多種多様な顧客ニーズに合致したサービスを提供していくとしている。