KDDI、KDDI総合研究所、KDDIスマートドローン、清水建設は、2024年8月6日、清水建設が建設中の北海道新幹線 渡島トンネル上二股工区において、Starlinkによるauの通信エリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」を活用した、トンネル建設現場からの3D点群データのリアルタイム伝送実証に成功した。
同技術により、施工進捗や壁面のずれ・亀裂などの異常を遠隔からリアルタイムで確認でき、建設現場の定期巡回や施工管理にかかる時間を大幅に短縮することが可能になる。
同実証は、総務省SCOPE(国際標準獲得型)JPJ000595の委託を受けて実施した研究開発の成果となる。
3D点群データは、映像と比較して奥行き情報も含め立体的な情報を取得できることから、測量用途など建設現場での活用が進んでいる。一方、現場で測量した3D点群のデータ量は非常に多く、遠隔地と共有するためには3D点群データを保存した記録媒体そのものを運んだり、時間をかけてクラウドに伝送したりする必要があるなど、即時共有が困難であった。
2024年8月5日、6日、渡島トンネル坑内外(北海道二海郡八雲町)にSatellite Mobile Linkでau通信エリア網を構築し、四足歩行ロボットやドローンに搭載したLiDAR 3Dスキャナーで撮影した3D点群データを、清水建設のイノベーション創出拠点「温故創新の森 NOVARE」(東京都江東区)へ伝送する実証を行った。
四足歩行ロボットやドローンなどに搭載可能な小型コンピューター上でも動作する、KDDI総合研究所が開発した3D点群データのリアルタイムエンコーダーでデータを圧縮し、伝送に必要な帯域を約1/20に削減することで、従来は遠隔での撮影からデータ確認まで数時間かかっていたものを10秒以内まで大幅に短縮。セルラー回線で遠隔の事業所への高品質な3D点群データのリアルタイム伝送を実現した。また、四足歩行ロボットやドローンに搭載したLiDAR 3Dスキャナーで取得した最大約24万点/秒の3D点群データを、同様に搭載した約200g程度の小型軽量なコンピューター上でリアルタイムエンコード処理を行うことで、3D点群のリアルタイム伝送ができることを確認した。
将来的には、四足歩行ロボットやドローンなどを遠隔操作/半自動化/自律化することで、遠隔からの施工管理や監視・検査が可能になる。例えば、土木建築の分野では、現場から即時伝送される3D点群データを用いて、設計情報であるBIM(Building Information Modeling:素材などの属性情報を含む3Dデータ)と比較して出来形管理(施工物が意図する規格基準に合致するよう管理すること)を行うことや、即時性を求められる進捗確認や鉄筋検査・コンクリート打設検査での異常検知などにおいて、品質・進捗管理の効率化や安全性・生産性の向上に寄与する。また、大規模な点群データを扱うデジタルツインへの応用も期待される。
【各社役割】
KDDI | プロジェクト管理、実験企画・推進、サービス化検討 |
KDDI総合研究所 | ユースケースに応じた点群圧縮技術の最適化、実証システム提供 |
KDDIスマートドローン | 実証のためのドローンのカスタマイズおよびオペレーション対応 |
清水建設 | ユースケース検討、現場実証管理 |