2024年7月10日、SORA Technology(以下、ソラテクノロジー)は、北日本スカイテック、スマート農業共同体(以下、SAc)、東京農業大学と共同で、独自のドローン・AI技術を用いて水田の中干し期間を測定する実証実験を実施したことを発表した。

 STARTUP HOKKAIDOが主催するオープンイノベーションプロジェクトLocal Innovation Challenge HOKKAIDOの採択事業として北海道岩見沢市の土地改良区において実施したもので、水田から発生する温室効果ガスの抑制に取り組む生産者への貢献を目指す。

各者のロゴマーク(ソラテクノロジー、STARTUP HOKKAIDO、スマート農業共同体(SAc)、北日本スカイテック、東京農業大学)

 水田は地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一つであるメタンガス(二酸化炭素と比べて25倍の温室効果)の発生源であり、日本国内の人間活動によるメタンガス排出量の45%は稲作によるものといわれている。

 稲を育成する間に水田の水を一定期間抜いて乾いた状態にしておく中干しという作業は、稲の品質低下と収穫量の減少を避けるとともに、メタンガスの発生を抑制する効果がある。中干し期間が長いほどメタンガスの発生を抑制できることから、稲の生育を阻害しない範囲で中干し期間を延長することは、温室効果ガスの削減につながる。

 同社は中干し期間の測定にドローンと独自AIを活用。自社開発の固定翼型ドローンで上空から水田を測定し、AIの画像認証技術によって水の有無を判定する。1回の飛行で最大100ヘクタールを撮影でき、限られた時間内でも広範囲の水田を計測し、中干しの日数を算出することが可能だ。

写真:水田の脇で上空のドローンを見上げる操縦者
実証実験の様子
写真:芝生の上の固定翼機
使用した固定翼機

各者コメント

スマート農業共同体(SAc)

 SAcでは今年度から新しくJ-クレジット創出に取り組むため、プロジェクトの登録申請を予定しています。スマート農業を用いた安全な中干し期間延長の取り組み方法を研究し、その情報を共有することで、参加する農業者の不安の解消を目指します。農業者の新たな収入源の確保と環境に配慮した農業の両立に貢献します。

北日本スカイテック

「空と人をつなぐ、明日へ」をミッションに掲げ、ドローンの現場実装を推し進めることで時代が求める、スマート技術の普及に貢献します。ドローンとAIを用いた中干し期間を測定する新しい技術の確立に向けて北海道の環境保全型農業の「これから」に取り組みます。

東京農業大学地域環境科学部生産環境工学科 岡澤宏教授

 メタンは二酸化炭素の25倍の温室効果をもたらすといわれています。この主な発生源の一つが水田です。日本におけるコメ作りにおいて,水管理による水田からのメタン排出抑制技術が注目されています。ドローンによる画像診断手法が適用できれば,広域的に水管理の有効性とメタン排出抑制が把握できる新たな環境保全型農業の普及につながります。