2024年3月22日、大林組とNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、ドローンを活用した完全無人巡回による工事進捗管理の実証実験を3か月にわたって実施したことを発表した。同実証により、屋内建設現場の巡回・記録に要する時間を従来の1時間から10分に短縮し、日々変化する状況下で安全に自動巡回ができることを確認した。

 建設業界では、屋外での工事写真の撮影や測量目的でのドローン活用が進む一方、GNSSが取得できない屋内での利用は進んでいない。両社は、2021年より現場巡回をはじめとする施工管理業務の効率化に向けて、ドローンの運用検証を共同で実施してきた。

 従来、ドローンを利用するには離着陸やバッテリー交換のために操縦者が現場にいる必要があったが、同実証では自動給電が可能なドローンポートと専用のドローンポートシステムを導入することで、ドローンのみの完全無人巡回を実現した。

実証実験に使用したドローンポート「Skydio Dock」
ドローンが開口部から地下に降下する様子

実証の内容

 実証実験を行った大規模建設現場は、地上と地下の工事を並行しており、地下空間では重機による掘削作業を行っていたことから、職員の立ち入りが困難で進捗管理に時間を要していた。同実証では、Skydio製の自律飛行型ドローン「Skydio2+」と専用のドローンポートシステム「Skydio Dock and Remote Ops.」を活用して進捗管理の効率化を図った。

 Skydio2+は、機体の上下に搭載したカメラで取得した映像により、周囲の3次元環境と自己位置を推定する。工事の進捗により周囲の状況が変化した場合でも障害物を回避し、安全に自動巡回を行う。

 Skydio Dock and Remote Ops.は、事前の飛行ルートやスケジュールをクラウドサービス「Skydio Cloud」上で設定することができる。また、自動離着陸、自動給電機能を備え、特に大規模現場において課題となる、現場と現場事務所間の往来に要する手間と時間を削減する。ドローン映像のリアルタイム配信機能により、施工管理者や発注者が工事進捗を確認できる。

 実証期間は2023年11月から3か月にわたり、平日の21時から約10分間の飛行を合計56回実施した。

ドローンとドローンポートを活用した工事進捗管理イメージ
同一ポイントで自動撮影した写真群

【各社役割】

大林組・建設現場の実証フィールド提供
・建設現場で活用するための機能・運用面での課題洗い出し
NTT Com・Skydio製品の運用サポート、Skydioとの技術提供・機能要望の調整
・取得データの解析

 両社は、2024年度内の建設現場での本運用開始を目指し、現場への導入支援体制を整備していく。今後は動画から切り出した連続的な静止画を点群生成ソフトで解析し、3次元点群データや3Dモデルを作成するなど、映像の二次利用による工事進捗管理の高度化と、施工管理業務の効率化を進めるとしている。

自動飛行で取得した動画から解析された3Dモデル