2023年4月13日、DJIは、シネマグレードの空撮システムを備えたオールインワン型ドローン「DJI Inspire 3」を発表した。販売は2023年6月末までに開始する予定で、価格は176万9,900円。

 高い測位精度を備えるフルサイズセンサー搭載8Kカメラドローンとなる Inspire 3は、機体の一体型デザイン、161°超広角FOVナイトビジョンFPVカメラ、O3 Pro伝送での制御システムが特徴。同クラスのドローンの中でも高い飛行性能を有し、大規模撮影にシームレスに適用できるプロ向けエコシステムに対応する。DJI製ドローンの中で、唯一RTKを使ったWaypoint Pro機能と全方向障害物機能の両方に対応する。

Inspire 3の特徴

機体の一体型設計

 前モデルから機体設計を一新した軽量な一体型ボディで、携帯性に優れたフォームファクターと堅牢な変形型フレームを備える。機体重量は約3995g(ジンバルカメラ、バッテリー×2、レンズ、PROSSD、プロペラを含む)。FPVカメラ、複数のビジョンセンサー、測位用アンテナ、データ格納ストレージスロットが機体フレームとシームレスに融合された設計となっている。360°パンに加え、新たにチルトブーストにも対応。ランディングギアが下がっている時、ジンバルは上向き80°までカメラを向けて撮影でき、機体フレームなどの映り込みもない。

 デュアルTB51インテリジェントバッテリーはホットスワップに対応し、飛行時間は最大28分。最大飛行速度は94km/h、最大上昇速度8m/s、最大下降速度8m/s、最大下降(チルト)速度は10m/s。

デュアルバッテリーシステム

シネマグレードのフルサイズ8Kイメージングシステム

 Inspire 3のために開発された同社最軽量のフルサイズセンサー搭載ジンバルカメラ「Zenmuse X9-8K Air」は、最新の映像処理システムCineCore 3.0を搭載し、最大8K/25fps CinemaDNG動画や8K/75fps Apple ProRes RAW動画を内部収録することが可能(ライセンスキーは別売)。S&Qモードでは、最大4K/120fpsのクロップなしフルサイズ撮影動画をProRes RAWで内部収録できる。

18mm F2.8フルサイズレンズ、ジンバルカメラ「Zenmuse X9-8K Air」

 同カメラはデュアルネイティブISOにより、30fps以下のフルサイズ撮影の場合、EI 800/4000に対応し、映画制作でよく使われる24fpsを利用できる。30fpsを超える場合はEI 320/1600に対応。低照度環境下でも、細部まで鮮明な映像を撮影することができる。

 14+ストップのダイナミックレンジに対応し、日の出や日没のような複雑な照度環境下でも、明暗部のディテールまで鮮明に捉える。また、ハイダイナミックレンジにより後編集での選択の幅が広がり、大きく露出を調整した場合でも、忠実な色合いを保持するとしている。

 DJI DLマウントに対応するレンズ群(別売)には、既存の24mm、35mm、50mmフルサイズレンズのほか、8K空撮用に設計された18mm F2.8フルサイズレンズと75mm F1.8フルサイズ望遠レンズ(後日発売予定)が新たに加わった。

DJI DLマウント対応レンズ

 DJI独自のDJIシネマカラーシステム(DCCS)により同カメラは実物に忠実な色合いを捉える。DCCSによって、DJI Ronin 4Dなどの地上ベースのシネマカメラとX9-8K Airで撮影した映像の色合いは容易にマッチするため、空撮から地上での撮影に至るまで一貫したカラースタイルを提供する。

 同梱のDJI PROSSD 1TBは、書き込み速度1,100MB/s、読み込み速度900MB/sに対応。USB-Cケーブルを介してパソコンと直接接続でき、簡単にファイル共有、シームレスなワークフローを実現する。

高精度フライトシステムを使用したインテリジェントモード

 建築や測量の分野で使われているRTK高精度測位技術を搭載し、cmレベルの測位を実現。精度の高い飛行ルートにより撮影効率を向上させる。

 RTK測位用の2層式セラミックアンテナを内蔵し、3種類のGNSSシステム(GPS、Galileo、BeiDou)の信号を受信可能。ネットワークRTKを有効にする、もしくはD-RTK2モバイルステーション(別売)を設置することで、追加モジュールなしで高精度の測位が可能になる。

 また内部標定機能を搭載しており、ほとんどのシナリオでコンパスキャリブレーションが不要。さらに、Waypoint Proを新たに搭載し、飛行ルートや撮影計画を幅広くカスタム設定できるようになった。

<Waypoint Proの機能>

・リピータブルルート
 飛行高度、飛行速度、ジンバル角度、カメラ設定など、事前設定した全てのパラメーターを維持した状態で同じルートを正確に自動飛行。同じ飛行ミッションを繰り返すことができるため、難易度の高いワンテイクショットを簡単に撮影したり、時間を変えながら複数回同じルートを飛行し、昼から夜、または季節の移り変わりを長時間のタイムラプス映像で捉えることができる。

・3Dドリー
 クレーンやケーブルカム、ドリーのような動きを実行する。ユーザーが飛行ルートを計画した後、撮影のニーズに合わせて飛行速度やジンバル角度などを調整しながら、手動で飛行ルート上で機体を前後に往復させることができる。これによりシネマ級の複雑なカメラワークを簡単かつ効率的に実行することができ、より有効的な視覚効果を実現する。

 新機能のSpotlight Proは機械学習アルゴリズムをもとに、ジンバルカメラが1つの被写体を認識し、自動で被写体にフォーカスしながらトラッキングする。パイロットは飛行へ集中することができ、1人でも複雑なシーンを撮影することが可能。

全方向障害物検知システム

 9個のビジョンセンサーを使った全方向障害物検知システムを備えるほか、障害物回避のカスタム機能を新たに搭載。水平方向、上方、下方の障害物検知は、それぞれ個別で有効/無効にすることができ、撮影シナリオに合わせて障害物警告範囲を手動で設定できる。同機能は、能動的な障害物回避機能が無効になっている間、ナビゲーションディスプレイ上に障害物との距離をリアルタイムで表示し、障害物が設定範囲内にある時にアラートを発動する(自動的には回避しない)。

超広角ナイトビジョンFPVカメラ

 超広角161° FOVのFPVカメラを搭載し、1/1.8インチ ナイトビジョンセンサー、3μmピクセルサイズ、最大1080p/60fpsのライブ映像を実現。昼夜問わずクリアで安定した映像を低遅延で伝送できるため、周囲環境の状態を確認しやすくなり、飛行中の安全性を高めている。

FPVカメラ

O3 Pro映像伝送&制御システム

 O3 Pro映像伝送システムは、伝送距離・遅延・全体的な安定性の面で、従来の伝送システムから大幅にアップグレードし、シングル制御モードでは最大伝送距離15km(日本では8km)、デュアル制御モードは最大伝送距離12km(日本は6.4km)を実現。また、最大1080p/60fpsの安定した高画質ライブ映像を90msの超低遅延で伝送する。今回初めて最大伝送距離5kmの4K/30fpsライブ映像伝送にも対応し、撮影現場でのUHD画質での映像出力やライブ配信へのニーズを満たした。

 デュアル制御モードでは、2台の送信機はドローンからの映像受信や機体制御を独立して行えるため、現場のパイロットとジンバルオペレーターは撮影現場内の別の場所でそれぞれの作業を行うことができる。

 7インチ1200ニト高輝度画面を搭載した「DJI RC Plus」を同梱。強い直射日光下でもクリアな映像を映し出す。内蔵バッテリーの駆動時間は約3時間18分、ホットスワップに対応したWB37外部バッテリーを使用した場合、6時間まで駆動時間を延長可能。HDMI出力ポートのほか、前面、背面、上部にカスタムボタンやカスタムダイヤルを搭載する。DJI Pilot 2アプリ(Inspire向け)がインストールされており、素早く起動し直感的なUIで操作できるため、内蔵の状態管理システムといった機能に簡単にアクセスできる。

DJI RC Plus

DJI Proエコシステムに対応

 3.5mmジャックを介した空撮機材と地上用機材間のタイムコード同期に対応。複数のカメラで撮影した大量の映像を処理する必要がある場合、タイムコード同期を使うことで編集プロセスを大幅に簡略化・効率化する。

 また、1台のRC Plusと1台の高輝度遠隔モニターのペアリングが可能。このモニターを使用することで、DJI Proエコシステムへのリンクが可能になり、DJI 4DハンドグリップやDJI Master Wheels(ジンバルコントローラー)といった製品を使用できる。これによりカメラスタビライザーRonin 2と同等のジンバル制御を実現。さらに、DJI 3ch Follow FocusをRC Plusに接続すると、カメラのフォーカスや絞りを調整できる。

販売価格

DJI Inspire 3 コンボ:176万9,900円
機体、Zenmuse X9-8K Airジンバルカメラ、RC Plus送信機、TB51 インテリジェントバッテリー×6、充電ハブ、PROSSD 1TB、トロリーケース、折りたたみ式クイックリリースプロペラ(1組)×3、レンズ収納ボックス、RC Plus ストラップなど

DJI Inspire 3 コンボ

アクセサリー

・トロリーケース
 伸縮式ハンドルと2つのサイドハンドルを搭載。車輪は360°回転可能。ダイヤルロックを2カ所に搭載。

・新設計クイックリリースプロペラ
 折りたたんで収納が可能、飛行前に再度取り付ける必要がない新設計のプロペラ。

・RC Plus送信機
 ストラップやウエストサポートといったアクセサリーを取り付け可能。

・バッテリー充電ハブ
 折りたたみ可能でコンパクトに刷新。8つのバッテリーを同時にセット可能。急速充電モードでは同時に2つのバッテリーを0%から90%まで35分で充電する。完全充電の場合は160分。付属の65W USB-Cポートを使いRC Plus送信機の充電にも対応する。

 そのほか、個別購入が可能なアクセサリーは以下。

DJI DL 18mm F2.8 ASPHレンズ(新):16万380円
DJI DL 24/35mm F2.8 LS ASPHレンズ:17万1,512円
DJI DL 50mm F2.8 LS ASPHレンズ:15万8,268円
DJI RC Plus送信機:17万6,000円
DJI TB51 インテリジェントバッテリー:5万1,150円
DJI PROSSD 1TB:9万200円
CinemaDNG/Apple ProRes RAWライセンスキー:14万2,890円(store.dji.comでのみ販売)

▼ DJI Inspire 3
https://www.dji.com/jp/inspire-3

DJI Inspire 3(DJI JAPAN YouTubeチャンネル)