2023年2月27日、KDDI、KDDIスマートドローン、ティアフォー、Psychic VR Labは、ドローンやロボットでPCR検体を模した物資や食品配送を行う実証実験を実施することを発表した。2023年1月19日から2023年3月31日まで、内閣府の「スーパーシティ型国家戦略特区」である茨城県つくば市において実施する。

 同実証は、都市部でのドローンのレベル4飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)による運航を想定して実施する。病院の屋上から検査機関までドローンでPCR検体を模した物資の輸送を行い、品質面や輸送効率などを検証する。

 さらにドローンの「空の道」をXR(クロスリアリティ)コンテンツで示し、ドローンを視覚的に認識できる仕組みを構築することで、地域住民の認知獲得・受容性向上に取り組む。ドローンが歩道を横断する際は歩行者に対して“赤信号”で通知するなど、第三者(地域住民)への周知目的でドローンの飛行ルートをXRコンテンツで示し、地域住民と無人航空機とのリスクコミュニケーションの手段とする。

 あわせて、ドローンと配送ロボットを組み合わせたフードデリバリーも実施。往路・復路において複数のドローンで食品を配送し、ラストワンマイルは配送ロボットが公道を走行して個人宅まで商品を届ける。配送効率を検証するほか、公道における配送ロボットの課題抽出を行う。

 なお同実証は、KDDIが内閣府から受託した「先端的サービスの開発・構築等に関する調査事業」の一環として、つくば市の協力のもと実施する。

実証概要

1. PCR検体輸送、XRでドローンの「空の道」を可視化

 2022年12月に施行された改正航空法でレベル4飛行が可能となり、都市部におけるドローンの利活用に期待が高まっている。ドローン物流の社会実装の実現には、各種ガイドラインにおける無人航空機の輸送ルールなどを整理する必要があるほか、有人地帯の上空を飛行するにあたり、地域住民の受容性を高めていく必要がある。

 この実証では、PCR検体を模した物資をドローンで輸送し、サービス面や運用面における課題を抽出する。車などの輸送手段との比較評価を行い、品質面や輸送効率などの検証を行う。また、KDDIが提供する「5G XR VIEWER SATCH X powered by STYLY」アプリを活用し、スマートフォンやデジタルサイネージを通じて「空の道」(ドローンが飛行する航路を可視化したもの)を表示する。実際のドローン運航情報と連携し、ドローンが歩道を横断する際は歩行者に対して“赤信号”で通知する。

PCR検体輸送の様子
XRアプリ上で歩行者用信号が変わる様子

 期間は、PCR検体輸送が2023年1月19日から2023年2月27日まで。「空の道」は、2023年1月19日から2023年3月31日まで。「空の道」について、PCR検体輸送を実施しない期間中は、飛行するドローンをARで再現する。配送ルートは、筑波メディカルセンター病院からつくばi-Laboratoryまで、約0.3km。

PCR検体輸送の配送ルート

使用機体

ACSL製「PF2-LTE」

2. ドローンとロボットを組み合わせたフードデリバリー

 ドローンのレベル4飛行が制度上可能になったことで、都市部での利活用の可能性が高まっている。社会実装に向けて、今後、配送効率と安全性の両面を検証していく必要がある。また、配送ロボット(低速・小型)は、2023年4月に施行予定の改正道路交通法により「遠隔操作型小型車」として歩行者と同様の交通ルールで走行可能になる。公道において、より安全な走行を実現するため、フードデリバリーなどの具体事例に基づく実証を行い課題抽出していく。

 この実証では、宝陽台地区の住民が遠隔医療アプリLEBERを使い、療養に必要な商品を注文すると、地域のスーパーマーケットから公民館まで、モバイル通信で遠隔自律飛行するドローンが配送する。

 公民館では商品を配送ロボットに積み替え、注文者の自宅前まで自動配送を実施する。歩道の幅員などの環境に応じて遠隔操作型小型車と歩行者を分離するなど、適切な制度・規制への提案につなげることを目的としている。

 また、フードデリバリーのドローン2機(往路・復路)とPCR検体輸送のドローン1機の合計3機のドローンを同時に飛行させ、ドローンの運航管理システムで遠隔制御を行い、オペレーションを含めた安全性についても検証する。

配送の流れ
ドローン・配送ロボットを組み合わせたフードデリバリーの様子

 実施期間は2023年2月20日から2023年2月27日まで。配送ルートは、スーパーマーケット「フードスクエアカスミ牛久刈谷店」から、つくば市宝陽台地区の公民館「宝陽台自治会館」まで、約1.5km飛行し、公民館から先は配送ロボットが注文者の自宅まで走行する。

フードデリバリーの配送ルート

使用機体

PD6B-Type3(プロドローン製)

自動配送ロボット(川崎重工製)

自動配送ロボット

 「小型、軽量」「高い走破性」「広い荷室スペース」のコンセプトで設計・開発された自動配送ロボット。川崎重工が開発したハードウェアに、ティアフォーの自動運転ソフトウェア「Autoware」を用いて自動運転化。

各社の役割

KDDI・事業全体の企画・統括
・委託事業管理
・通信環境の構築
KDDIスマートドローン・ドローンの運航・検証
・ドローン、自動配送ロボットに関するマルチシェアリングモデル構築に向けた提案
・運航管理システムの提供
ティアフォー自動配送ロボットの運行・技術およびサービス検証
Psychic VR Lab・つくば市主要スポットのデジタルツイン開発とコンテンツ開発
・教育プログラムの開発、提供