2023年2月1日、大阪大学レーザー科学研究所の山本和久教授、石野正人特任教授らの研究グループは、ドローンとレーザーを用いた「レーザー空中サインシステム」の新規開発を行い、実証実験に成功したことを発表した。

 屋外空間を最大限に利用し、望む位置に必要な情報を鮮明に投影する空中ディスプレイであり、同実証において遠方からや昼間でも視認できることを確認。これにより、避難誘導や遭難救助等への適用の可能性を検証できた。

 2021年、大阪・関西万博2025(以下、EXPO2025)に向けた面白く役に立つものを開発するという趣旨で「レーザーとドローンによる空中サインシステム」を提案し、EXPO2025の開催機運醸成と未来社会を見据えたイノベーション創出に向けた「夢洲での実証実験の公募」に採択され取り組んだものとなる。2022年8月9日に、イームズロボティクス(大型ドローン)とヴィーナスレーザー(大型プロジェクタ)の協力のもと、万博予定地である大阪夢洲における屋外での大型空中映像投影の実証実験に成功した。

開発技術について

 研究グループでは、これまで可視光半導体レーザー光の走査を用いた応用技術の研究を行い、可視光カラーLiDARやIoT照明ステーション等の提案と原理検証を行ってきた。今回は可視光半導体レーザーの光走査型の投影装置と透過型スクリーンをそれぞれドローンに搭載したレーザー空中サインシステムを開発するとともに、その事業性を検証するために屋外での実証実験を行った。

<開発内容の特徴>

1. どのような距離にでもピントが合う可視光半導体レーザー走査投影技術(※1)と大型でも軽量かつ風圧に強い透過型スクリーン技術(※2)をドローンに適用することで、夢洲のような風のある屋外の空中においても安定投影像を得ることができた。

2. レーザーの高い輝度や彩度およびレーザー光独特なスペックル(※3)を強調することにより、遠方からでもかつ昼間でも視認できるサインシステムを実現した。

※1 ほぼ平行となるレーザービーム(可視光)を偏向デバイスで走査し、同時に光信号に強弱を付けることで映像を投影する技術、ビームが広がらないのでレンズレスでどのような位置でもフォーカスが合う。
※2 スクリーンに独自の工夫を加えレーザー光を透過させる技術。空中に保持するため風の抵抗を受けにくくすることを同時に行っている。
※3 レーザー光が網膜上で干渉し明暗のまだら模様が見える現象。ギラギラ感が出る。

 機動性の高い同システムにより、巨大地震等の大災害発生時の避難誘導への活用が期待される。夜間停電時の暗闇の中でも広い範囲から誘導表示が確認できることから、住民を安全に避難所へ誘導することが可能。イベントなどでの密集を避ける群衆誘導や防犯パトロール、人の踏み込めない場所での救難情報の表示や、空中広告・速報ニュース表示、イベントでのアトラクションやエンターテイメントとしての活用が見込まれる。