2023年1月4日、ダイヤサービスは、SkyDrive、ロックガレッジ、房総山業と共同採択を受けた千葉県「先進的デジタル技術活用実証プロジェクト補助金」において、ドローンとAI検知、マッピングによる狩猟DXの実証実験を実施したことを発表した。

 AIを活用したドローンを開発するロックガレッジ、物流ドローンの開発を行うSkyDrive、有害鳥獣の捕獲・防護方法のコンサルティング・資器材の開発を行う房総山業、狩猟に関する教育・訓練を行う木更津猟友会、そしてドローン運航事業を行うダイヤサービスが協力して千葉県の害獣駆除の課題解決を目指す。

 今後、AIや物流ドローン等を活用した猟銃の「千葉モデル」を策定し、将来的には全国展開を目指していくとしている。

 鳥獣による農作物の被害が、農林業者の生産意欲を低下させる深刻な問題となっている。環境省・農林水産省は2013年に「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を共同で取りまとめ、「シカ・イノシシの生息頭数を2023年までに半減させる」ことを目標にさまざまな活動を行っており、農作物被害額は減少傾向にある。しかし被害を受ける地域は広がる傾向があり、また狩猟者の高齢化が進み目標未達の可能性がある状況だという。

 千葉県においても高齢化による狩猟者の減少が進み、捕獲頭数も増加傾向にある。また、イノシシが県内を北上し人口の多い地域へと増殖を続けており、農作物被害に加えて人への危害の可能性も出てきて狩猟者の負担が増している。

事業の全体イメージ

先進的デジタル技術の利活用
1. 小型民生ドローンとAI検知で効率的にマッピング
2. 大型物流ドローンで効率的にくくり罠を運搬

実証プロジェクト

<2022年度の対応>
赤外線搭載ドローン自律飛行とAIによるイノシシの自動検知
検知場所へ大型物流ドローンで「くくり罠」「遠隔通報機」搬送
設置場所の専用アプリへのマッピング・データ管理

<2023年度の対応>
仕留めたイノシシの大型物流ドローンによる麓への搬送
イノシシ以外の害獣への転用トライアル
ジビエとしての出荷拡大

<2024年度の対応>
獣害DX千葉モデルの確立
県外ドローンサービサーへの教育指導(千葉モデルの水平展開)

実証実験の概要

 今年度はこれまで個別に行ってきた試験をまとめ、一連の流れとして最初から最後までを通しで実施した。

日時 :2022年12月27日(火)11:30~13:00
場所 :千葉県木更津市矢那

1. 市販ドローンの自律飛行による害獣のAI検知

 今回は飛行範囲内にイノシシやシカがおらず、赤外線カメラによる検知は行えなかった。

市販ドローンDJI「Matrice 200 V2」、赤外線カメラ「XT2」
自律飛行、AI検知システム「3rd-EYE Drone」

2. 物流ドローンによるくくり罠・遠隔通報装置の搬送

 くくり罠、遠隔通報装置 合計10kgを直線距離263m(徒歩の場合迂回の必要があり約25分の道のり)を自律飛行で搬送し、着陸させずにホイストで荷降ろしを行った。

物流ドローン「SkyLift」
運搬したくくり罠と遠隔通報装置

3. 狩猟者によるくくり罠・遠隔通報装置の設置

 市販のくくり罠および自作の遠隔通報装置を実際に設置した。

くくり罠「オリモOM-30型」(市販)
遠隔通報装置(オリジナル)

4. マッピング、遠隔通報装置によるくくり罠の監視

 遠隔通報装置のGPS取得に時間を要し、メディア向け公開中には表示されなかった(写真は事前の試験時のもの)。

マッピング・モニタリングシステム「3rd-EYE Center」および遠隔通報装置からの映像表示。

使用ドローンの詳細

1. SkyDriveの物流ドローン「SkyLift」

サイズ全長2.5m×全幅1.9m×全高1.0m(プロペラ展開時)
全長1.9m×全幅1.2m×全高1.0m(プロペラ折りたたみ時)
飛行時間9~15分(積載重量による)
飛行速度36km/h
機体重量35kg(バッテリー20kgを除く)
最大積載量30kg(ホイスト機構使用時は20kg)

2. DJI「Matrice 200 V2」(赤外線カメラ「XT-2」搭載)

サイズ全長722mm×全幅247mm×全高242mm(プロペラ折りたたみ時)
飛行時間38分(ペイロードなし)
飛行速度81km/h
機体重量約4.69kg(バッテリー2個搭載時)
最大積載量1.45kg