2022年12月20日、ゼンリンは、同社が参画する秩父市生活交通・物流融合推進協議会が、埼玉県秩父市の大滝地域において、物流分野の取り組みとして「遠隔運用によるドローン配送」、医療分野では「オンライン栄養指導」「オンライン聴診器診察」の実証実験を実施したことを発表した。

 同協議会では、埼玉県秩父市の山間地域における少子高齢化によるヒトとモノの移動の困難さに着目した、物流・公共交通ネットワーク「秩父モデル」構築への取り組みを、2020年11月より開始している。今回の実証実験はその取り組みの一環として、遠隔運用によりコスト効率性を高めたドローン配送体制の構築、および地域住民の通院困難な状況を改善する医療提供体制の構築を目指して実施した。

実証実験の概要と結果

1. 遠隔運用によるドローン配送

 遠隔運用者は、ドローン出発地点(道の駅大滝温泉)から約14km離れた秩父市内の拠点より、遠隔でドローンの運航判断・操作・監視を実施。現地ではドローン機体の点検など、地元事業者が拠点業務の一部運用を担当するかたちで行った。

 遠隔運用の体制のもと、最大積載量7kgのドローンを活用し、道の駅大滝温泉から二瀬ダム管理所前まで(山間地域を含む往復約6km)弁当や飲料などの物資を配送した。また同実証実験により、今後どこからでも遠隔運用の体制を構築できることを確認した。

位置関係図。左より、着陸地点(二瀬ダム管理所)、出発地点(道の駅大滝温泉)、遠隔運用地(秩父ビジネスプラザ)。
JP楽天ロジスティクス、秩父市内において市街地からの遠隔監視・操作による山間地域へのドローン配送の実証実験を実施(Rakuten Drone YouTubeチャンネル)


2. 医療

 医療分野においては、オンライン栄養指導とオンライン聴診器診察を実施した。

 オンライン栄養指導は、地域の診療所において医師同席のもと、インターネットビデオ通話を利用して行った。秩父市立病院と大滝診療所がオンラインでつながることで、診療所の通常診察メニューにはない栄養指導を実施することができた。

 オンライン聴診器診察では、看護師が患者宅を訪問して患者に聴診器を当て、遠隔地にいる医師がリアルタイムに聴診音を聴いて診察を行った。その結果、オンライン聴診器による聴診においても、対面診察と同等の聴取が可能であることを確認した。

注2:状態の安定した患者。注3:診療報酬は貰わず、通常診療とは別枠として実施。

 今後、実証を通じて得た成果を踏まえ、ドローン配送では、将来的に地域の事業者が遠隔運用も含めドローン配送の全運用を担う体制の構築を目指し、医療分野では山間地域における住民の質の高い医療機会の確保に向けた検討を進めるとしている。