2022年6月13日、ネクストウェア、ZenmuTech、アイ・ロボティクスは、秘密分散技術をドローンや移動型ロボットに搭載する技術「インテグリティ・ドローン」について連携し、同技術について技術検証を完了したことを発表した。2022年中に航空機やドローン、自動運転、防衛装備業界などへ提案を始めるとしている。

 同技術により、通信が途絶したドローンのデータは瞬時に無効化され、第三者の手にわたった場合でも機密データを復元したり、自律航行プログラムの逆アセンブルを行ったりすることが不可能となる。ドローンの運用効率に影響を与えることはなく、理論上はドローンや自動巡回型ロボット、自動運転車などあらゆる遠隔操作・自律制御型のロボットに搭載が可能だという。

 近年、産業領域や物流領域においてドローンの使用機会が増えている。安全保障の点でもドローンの重要性は増しつつあり、重要施設や機密施設、警察・消防等でもドローンや自律移動型ロボットの利用が進んでいる。

 ドローンやロボットの機体には、自律移動用のプログラムや飛行経路の情報、撮影したデータ等の機密情報が含まれている。ドローンは通信途絶により予期せぬ場所に飛んで行ったり、落下してしまったりする可能性や、テクノロジーの逆アセンブルを目的とした第三者に意図的に補足される可能性もあるため、機密漏洩の危険性や安全保障上の懸念がある。

秘密分散技術について

 情報セキュリティにおいて暗号化とは、原本に鍵をかけるイメージとなる。鍵を盗まれたり解かれたりすると原本が漏洩してしまう。秘密分散技術では、データを「それ自体は意味を持たない、いくつかの分散片」に分け、それぞれの分散片を別の環境で管理することで外部へのデータ流出を防ぐ。

 ZenmuTechの秘密分散「ZENMU-AONT」は、全ての分散片を集めなければ情報が復元できないという特徴を持つ。そのため、一部の分散片を物理的に切り離したり破壊することにより、残りの分散片は無意味なデータのまま復元することは不可能となる。

 今回発表するインテグリティ・ドローン技術は、このZENMU-AONTを利用し、ドローンに独自の技術でマイクロ化されたアルゴリズムを搭載、システム上でリアルタイムにデータを分散化していく。その分散片を通信でベースステーションに送ったり、想定外の事象が起きた場合には自動消去されたりする仕組みを組み合わせて実現する。

 同技術により、ドローン内に蓄積されたデータやプログラムは「想定された運用状況下にのみ意味を持つ」という設定が可能で、仮に通信途絶や落下といった想定外の状況になっても「ドローンの自分自身による無意味化」を提供するとしている。

基本構成とシステム処理概念図

各社の役割

ネクストウェア :秘密分散技術のドローン搭載の技術検証を共同で行い、顔認証やデータベースといった固有の技術と組み合わせた統合パッケージとして、国内外の航空機メーカー、空飛ぶクルマ・ドローン運用事業者などへの提案を行う。

ZenmuTech :秘密分散技術のドローン搭載の技術検証において、秘密分散技術の知財とAPIを提供する。また、製品展開の段階においては秘密分散技術を他のパートナーに対してライセンス提供を行う。

アイ・ロボティクス :秘密分散技術のドローン搭載の技術検証において、ドローンへの秘密分散技術の組み込み実証試験を行っている。加えて、ドローンソリューションを高度化し、サービスを各所に向けて展開していく。