2022年6月8日、ENEOSとアイ・ロボティクスは共同でドローンを活用した石油タンクの塗装を行い、「ドローン壁面補修」の石油タンクにおける実用性を検討したことを発表した。ドローン壁面補修は、アイ・ロボティクスや日本製鉄、日鉄テックスエンジが共同で開発・展開を進めている新技術である。

ドローン壁面補修の概要(共同研究プレスリリース時の画像)

 実証実験は根岸製油所において実施。上空に静止したドローンから電動ウインチで外壁吸着ロボットを吊り上げ、ロボットに搭載した特殊なデバイスにより高圧洗浄や塗装を行う。ドローンの挙動と電動ウインチの巻き上げスピード、吹付スピードや塗料の粘度等を高度なすり合わせ技術により精密制御している。

石油タンクのドローン塗装
石油タンクのドローン高圧洗浄

 先進国におけるインフラの老朽化と労働力不足は年々深刻となっている。一方、従来の仮設足場を利用する工法は、足場の組み立てにより工期が長くなることや高コスト化、台風・地震などによる倒壊・落下事故の危険性、高所作業エンジニア不足などの課題がある。そのため、高所作業をドローンやロボットに置き換えていくことが産業界を通して求められている。

 世界には2万5,000基以上の原油貯油タンクがあり、経済産業省資源エネルギー庁の統計によると国内の原油貯油タンクは500基以上あるとされている。半製品や燃料油のタンクも入れるとその数は10倍以上になるという。また、福島第一原子力発電所の処理水タンクは1,000基を超えて拡張し続けており、この老朽化対策も差し迫っている。

 タンクのメンテナンスは世界的な課題であり、その市場規模は非常に大きいものだという。アイ・ロボティクスは引き続きENEOSとの取り組みを続けるため、今後も国内の製油所での実証実験を計画しており、これらを経て同技術の最適化を進め、タンク補修の機械化・遠隔化・自動化を目指すとしている。

ドローンタンク補修を自動で行うイメージ