英国の大手通信企業BTと、スウェーデンの通信機器メーカーのエリクソンは、2022年5月31日、英国市場に商用5Gプライベートネットワークを提供するパートナーシップを締結したことを発表した。両者は、BTが製造や国防、教育、小売、医療、輸送、物流といった分野の企業や組織に、次世代モバイルネットワーク製品の販売を可能とする複数年契約を締結した。

 屋内外に高性能の5Gセルラーカバレッジを提供する専用プライベート・ネットワーク・ソリューション「Ericsson Private 5G」は、さまざまな用途に対応が可能。特に工場や教育機関、セキュリティ、超低遅延接続の重要性が高いその他の大規模サイトといった環境に適している。

 プライベート5Gネットワークにより、新しいアプリケーションとIoT機能が実現し、資産追跡や予知保全、接続センサー、リアルタイムデータ処理、自動化、ロボットなどの分野の生産性向上とビジネス運用の最適化、コスト削減の推進が可能となる。

 MarketResearch.comは、5Gプライベートネットワークが2021年から2028年の間に年間平均40%の割合で成長し、その市場価値は2028年までに140億ドルに達すると予測している。両社は、新技術がもたらすメリットを活用しようとする英国企業向けに大きな需要があると考えている。

 BTとエリクソンは、スマート化された地方港湾を目指す北アイルランドのベルファスト港の事案を含め、プライベート5Gネットワークが関わる複数の大型プロジェクトで既に協業している。

 パートナー企業が運用中の港湾の35エーカーの敷地に5Gプライベートネットワークを設置し、これによって陸運や物流、サプライチェーン、海運にまたがるプロセスを最適化し、港湾業務を円滑化して生産性を向上させることで運用効率を高め、デジタルトランスフォーメーションを加速する。

 毎年175万人以上の人々と50万台以上の貨物車両がこの港湾に出入りしており、2,400万トンの物資がフェリー、コンテナ船、貨物船によって管理および輸送されている。

 今回の協業を通じてどのように5GとAI、IoT、コネクテッド自動運転車といった他の新しい技術を組み合わせ、ベルファスト港とベルファスト市の他の地域の公共安全と物理的セキュリティを強化し、気候変動に対処するかも模索しているという。

 ベルファスト港湾委員会のコーポレート・サービス部門責任者、マイク・ドーソン氏は、「2021年から2022年末にかけて、パブリックとプライベート両方の5Gネットワークの実装が完了します。これらはCCTVカメラ、大気品質モニター、ドローン、運用効率を最大化するMiFiユニット、デジタルツインを含むもので、港のスマート化と環境改善のための複数の取り組みの基盤となります。テクノロジーは道路交通状況表示、道案内アプリ、交通コミュニティアプリを通じて、人や物資の動態に関する私たちのデータ収集をサポートしてくれました」と述べている。

関係者コメント

BT法人事業 Division X 取締役 マーク・オーバートン氏

 この度、英国で初めて私たちがエリクソンと締結した契約は、大きなマイルストーンであり、企業の変革を実現し、ハイパーコネクテッド空間の新時代を導く上で重要な役割を果たすことでしょう。

 私たちはBTの持つ固定・モバイル融合ネットワーク構築のスキルと専門知識を、エリクソンの持続可能でセキュアな最先端の5Gネットワーク機器と組み合わせることで、多くの業界を惹きつける先進的な提案を行っていきます。また5Gプライベートネットワークはスマートファクトリー処理とIndustry 4.0の発展を支援し、製造業者は大幅なコスト削減と効率化を実現できます。

 プライベート5Gネットワークは公共ネットワークとは異なり、個々のサイトや場所だけでなく、特定のビジネスニーズに合わせて構成できます。また、IoTやAI、VR、ARなど他の革新的な技術を導入する基盤となって、多くの可能性を開きます。

Ericsson UK & Ireland CEO キャサリン・アインリー氏

 今回のBTとの画期的な契約は、両社が共に5Gによる英国の変革に主導的な役割を果たしていることを示すものとなりました。Ericsson Private 5Gが提供する高品質で高速かつセキュアなコネクティビティにより、より安全で生産的かつ持続可能な事業運営を実現し、将来の産業と技術におけるグローバルリーダーを育てる上で有用な、きわめて重要な効率向上に貢献します。