ANAホールディングス(ANAHD)、長崎県五島市、そらや、長崎大学は、移植医療環境の向上を目指し、ドローンによる臓器(ラット肝)の搬送実証実験を長崎県五島市にて、2022年3月5日に実施した。

 臓器搬送では、安全に迅速かつ良い保存状態で臓器を搬送することが重要であり、離島における手段としてドローンの活用が期待される。同実証では臓器搬送を行う際のドローン搬送の有用性を、船による搬送と比較して確認を行った。

飛行区間:長崎県五島市福江港~久賀診療所付近

 同実証では、マルチコプター型ドローンを用いて臓器(ラット肝)を輸送した。ドローンの大きさは2.1m×2.3m×0.43m。搭載可能重量は4~5kg(バッテリー重量による)、運用最大飛行速度は10m/s。

 同実証を通し、ドローン搬送では既存の船での搬送方法と比較しても同等の温度管理、品質の維持、加えて円滑な搬送が可能となり、ドローンによる臓器搬送の安全性・有用性が確認された(輸送の安定性、全搬送時間の短縮の可能性等)。

 臓器移植には「提供 → 摘出 → 搬送 → 移植」のプロセスがあり、五島市においては「臓器の移植に関する法律」の運用に関するガイドラインにより、脳死時の臓器提供または移植を執刀できる病院が存在せず、心停止時の臓器提供のみが可能である。また移植は執刀医がドナーのいる病院に出向いた上で、摘出から搬送を行うことが多いのが現状だという。ドローンの活用により搬送の効率化に伴う臓器提供者(ドナー)の機会損失の防止と、執刀医の搬送負担軽減による移植医療環境の向上が期待される。

 なお同実証実験は、長崎大学大学院 移植・消化器外科(江口晋教授、曽山明彦講師)による計画策定ならびに取りまとめのもと、動物愛護管理法に則り実施された。

【各社役割】
・ANAHD:ドローンの遠隔運航・管理・教育。配送通知を含む配送管理システムの構築、同実証とりまとめ。
・そらや:関係者のコーディネーションおよびサポート、地域住民、自治体および港湾・漁港等の調整等。
・五島市:検証対象となる地域および関係者との調整等。
・長崎大学大学院 移植・消化器外科:臓器搬送に関する実証実験計画の策定と取りまとめ、有用性の各種検証。