2022年3月17日、ACSLとエアロネクストは、ペイロード5kgのスペックを持ち、レベル3(無人地帯における目視外飛行)による物流実証実験を重ねて改良してきた、新物流専用ドローン「AirTruck」の受注を開始することを発表した。3月22日に開催される自治体向けイベント「デジタル田園都市国家構想を実現する新スマート物流シンポジウム」にて初公開する予定だ。

新物流専用ドローンAirTruck

 両社は2020年8月に締結した4D GRAVITYライセンス契約に基づき、物流に特化した4D GRAVITYを搭載した用途特化型ドローンの開発を共同で進めており、2021年3月には最新試作機を発表していた。

 エアロネクストが開発した4D GRAVITYは、飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状、構造に基づく揚力、抗力、機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化。安定性、効率性、機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させる機体構造設計技術である。

 物流専用ドローンAirTruckと、現在の物流の主流であるトラックと組み合わせることで人手不足を解消し、過疎や高齢化が進む地域においても好きなものを好きな時に手に入れられる社会を実現していく、ラストワンマイル配送の一翼を担うことを目指すとしている。

AirTruck機体

 新物流専用ドローンAirTruckは、4D GRAVITYによる重心制御技術で荷物の揺れを抑えつつ安定した飛行を実現。空力シミュレーションや風洞実験を通した空力最適化で、高い飛行性能を持つ。LTE通信やFPVカメラなどを搭載し、レベル3を遠隔操縦で実施できる。ACSLの従来機体「ACSL-PF2」と比べ、ペイロードは3kg弱から5kgへと拡大。上から簡単に荷物を搭載する方式など、利用者が分かりやすく扱えるUX設計となっている。

AirTruck 機体概要
製品名AirTruck(エアートラック)
全長展開時 1.7m×1.5m、収納時 1.0m×1.5m
高さ0.44m
機体重量10kg
最大離陸重量25kg
ペイロード5kg
最大飛行速度10m/s
最大飛行時間約50分
最大飛行距離20km
最大上昇・下降速度上昇 3m/s、下降 2.5m/s
ホバリング精度水平方向 ±2.0m/s、垂直方向 ±1.5m/s
最大通信距離LTE電波圏内において制限なし

※販売時に変更となる可能性がある。

AirTruckロゴ

 全国的な人口の減少や少子高齢化、過疎化の影響により、流通機能や交通網の弱体化とともに買物環境が悪化し、買物弱者が増加している。宅配業者等により家まで届ける方法はあるが、物流業界の人手不足も顕在化している。こうしたラストワンマイル配送の課題を解決するため、政府や自治体においてはドローンをはじめとしたデジタルやテクノロジーを活用する取り組みが積極的に進められている。

 レベル4に対応するには、安定性や効率性、機動性を向上させた機体を開発し、レベル3環境で実証実験を重ねて改良していくことが必要となる。AirTruckは、4D GRAVITYを搭載することで飛行速度、飛行距離、配送可能重量、配送品質を向上。そして、これまでに山梨県小菅村、北海道上士幌町などにおける計466回の実証実験と計1,730kmの距離を飛行した実績が、新機体の開発に結び付いたという。

関係者(パートナー)コメント

北海道 上士幌町長 竹中 貢氏

 少子高齢化が進む上士幌町において本機体は既に実証実績があります。ドローン物流は食料品等へのアクセスが困難な買物弱者に対して、持続可能な豊かな生活を送るために必要不可欠になると確信しております。

セイノーホールディングス 執行役員 河合 秀治氏

 物流業界における人手不足は、社会インフラの持続可能性の観点からリスクが顕在化しています。この機体は物流専用機として安定的な稼働を期待でき、業界の省人化、無人化を進める上で有力な新技術だと捉えています。当社をはじめとして、業界全体において全国で利用されることになると思います。

KDDI 事業創造本部 ビジネス開発部 ドローン事業推進Gリーダー 博野 雅文氏

 ドローンの社会実装に向けては、ドローン本体の性能、信頼性や適応性は重要な要素であると考えております。AirTruckは、当社が提供するスマートドローンツールズ(※1)と組み合わせることで、より多くの物流ユースケースに適用することが可能になると確信しております。

※1 モバイル通信や運航管理システム、クラウドなど、ドローンの遠隔自律飛行に必要なツールを揃えたパッケージ。