ほめちぎるドローン教習所(大東自動車ドローン事業部)と赤福は、2022年2月22日に、ドローンを使用した商品の輸送実証実験を実施した。

 観光産業が盛んな三重県伊勢市では、コロナウイルスの影響により観光客が減少し、商品・サービスの提供方法の見直しを余儀なくされている。
 空撮や測量点検などにおいて活用の場が広がっているドローンは、今後、空飛ぶクルマとして貨物輸送や移動手段としても期待が高まっている。同実証実験ではドローン輸送の社会実装の可能性を主に、ドローンによる商品配送の需要、人口集中地区(DID)周辺での飛行時における通信環境の確認、そして三重県および伊勢市におけるデジタル社会推進へのフィードバックの3つを検証した。

着陸地点の様子(県営陸上競技場補助グラウンド)

 実証における離陸地点となる「赤福五十鈴川店」は人口集中地区に該当するため、近隣住民や店舗、観光客へのリスク最小化するため、事前に周知せず一般非公開とし、飛行ルートにおける国土交通省・三重県・伊勢市の管理課への事前・事後の説明・手続き対応や、飛行ルート周辺自治会への事前・事後説明を行うなどの対応をとった。ドローンは事前に設定したルートを自動飛行し、パイロット2名が連携して目視飛行を継続、緊急時には手動操縦でバックアップを行う。飛行ルート途中の道路や橋の歩行者往来を監視員が確認し、無線でパイロットと共有した。

 実証実験は、2022年2月22日、三重県伊勢市において、三重県、伊勢市、伊勢商工会議所の後援および実験会場周辺自治会の協力のもと実施。赤福五十鈴川店から県営陸上競技場補助グラウンドまで約1.2kmを飛行ルートに、輸送用ドローンを使って赤福「白餅黒餅」(約1.8kg)を輸送した。使用機体は、輸送BOXを取り付け輸送用機体として改造したDJI「Matrice 300 RTK」。

飛行ルート
離陸地点(赤福五十鈴川店)
ドローンに商品を積み込む様子
商品を載せ飛行するドローン
着陸地点(県営陸上競技場補助グラウンド)

検証結果

ドローンによる商品配送の需要
 関係者へのヒアリングでは、コロナ禍以降観光地への客足が鈍り、サービス提供方法の見直しや対面販売以外の販路拡大が必要だとする意見が多かったという。通販商品の輸送を行う物流会社もガソリン高騰やドライバー不足などの課題があり、ドローン輸送が社会実装され商品を届ける選択肢が増えることは、今後、観光地における経済的課題解消の一助になると同社は考えている。

DID地区周辺での飛行時における通信環境の確認
 離陸地点と着陸地点にパイロットを2名配置、自動飛行から着陸への精度を上げるためGNSSの測位を補正するD-RTK2モバイルユニットを赤福店舗前に設置した。D-RTK2ユニットの通信距離は障害物や電波干渉がない状態で2kmとなっているが、離着陸地点(直線距離で約500m)の間に遮蔽物が多く、D-RTK2ユニットと送信機がうまく接続しなかった。着陸地点の座標が2m弱ずれたため、パイロットの手動操縦で補正して着陸を行った。

三重県および伊勢市におけるデジタル社会推進へのフィードバック
 ハード面の課題はあったが、パイロット・監視員の連携で安全に実証実験を行うことができた。日常生活に近い環境下で検証ができたため、今回の知見を三重県および伊勢市が推進するデジタル社会推進事業にフィードバックし、レベル4(有人地帯での目視外飛行)解禁に合わせてドローン輸送の社会実装を推進するとしている。

実証実験の様子