11月8日、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ (以下IAI)とSixAIは、防衛技術の民間転用促進分野における新たな提携を発表した。この事業提携は、IAIの持つ防衛関連技術を民間の需要に合わせて、いかに有効活用していくかがポイントとなる。

 第1フェーズとして、主にグリーンエネルギー分野、インダストリー4.0分野、低高度運用での商業利用ドローンの監視・運用の3分野に焦点を置くとしている。

グリーンエネルギー分野
エネルギーの生産・利用・保存、それぞれの技術

インダストリー4.0分野
マシンツーマシン(M2M)でのコミュニケーションの最適化
生産ラインのオートメーション化
オートメーションプロセス改良のためのIoT技術の導入
生産ラインの監視および制御の完全自動化
人の手を全く介さず問題を解決に導くためのインテリジェントマシンの製造

低高度運用での商業利用ドローンの監視および運用
都市環境内における民間プラットフォームからのドローン制御技術
ドローン操縦技術者の訓練 など

 同事業では、IAIは主に技術開発を、SixAIはこれらの技術の商業化展開を担うとしている。

 1953年に設立されたIAIは、宇宙を含めた陸海空軍とその防衛能力、民間を含むサイバーセキュリティまで、さまざまな分野に最先端技術を提供するイスラエルの企業である。衛星技術、UAV技術、ミサイル技術、インテリジェンスソリューション、兵器システム、防空システム、ロボット技術、レーダー技術、ビジネスジェット、航空機製造技術などを幅広く手がける。イスラエル国内における技術者雇用分野での最大の企業の一つであり、国内外で数多くの研究施設を展開している。

 SixAIは、インダストリー4.0により新たな局面を迎えている企業や工場などに対し、世界中の企業の技術を応用してさまざまな技術開発・運用を提供している。これまでに、ホンダ関連会社の武蔵精密工業と合弁で、より安全でスマートな屋内モビリティの実現を目指す634 AIと、単純な検査や部品の移動といった工場内での単純作業用ロボットを提供するMusashi AIの二つの会社を日本で立ち上げている。

各者コメント

IAI 社長兼CEO Boaz Levy氏

 今回のSixAIとの事業提携には大きな期待を寄せています。今回のこの提携は、防衛技術からの民間転用が可能な我が社のさまざまな優れた技術、そして研究開発能力に関する、未来へ向けた我が社の新たな戦略的ロードマップの一部なのです。IAIの持つ防衛技術は、イスラエルの国防上、非常に大きな役割を果たしてきました。しかしそれは、昨今の農業分野、サイバーセキュリティ分野、そして治療薬分野での展開をご覧いただいてもお分かりの通り、民間転用を積極的に図っていくことで、一般の市場経済を活性化する大きな一因にもなるのです。

SixAI 創業者、最高経営幹部 Ran Poliakine氏 (共同事業を通じた日本市場への技術移転に関して)

 IAIとSixAIとの事業提携により、イスラエルの持つ優れた技術上のノウハウは、今や単なる防衛上の枠組みを超えたのです。このIAIの持つ「デュアルユース(軍民両用)」の技術導入は、世界が抱えるさまざまな問題に対して解決の糸口を日本にもたらし、世界的な規模での変化を生み出す契機となることでしょう。日本は、世界をリードする産業国です。イスラエルの、そしてIAIの開発した技術は、インダストリー4.0を通じた技術革新によって進行している日本の生産現場の改革をさらに強化し、日本の今後の産業発展に大きな貢献ができると信じて疑いません。

次期駐日イスラエル大使 Gilad Cohen氏

 日本とイスラエルは、来年2022年、国交樹立70周年を迎え、その関係は、ますます密接なものとなりつつあります。この事業提携は、違いを補完し合うことで相乗効果を生み出していく、イスラエル経済の特徴とも言えるものです。

駐日イスラエル大使館 経済担当公使 兼 経済貿易ミッション代表 Daniel Kolbar氏

 グリーンエネルギー、インダストリー4.0に代表される先進の製造業、そしてドローンの3分野は、日本とイスラエルの間で行われている最先端の技術開発そして技術提携の中でも、非常に大きな可能性を秘めている分野です。今回の事業提携が、より良く、そしてより平和な世界の実現に向けて、大きな成果を上げていくことを、私どもは信じて疑いません。