空飛ぶクルマの開発を手掛けるJoby Aviation社とアメリカ航空宇宙局(NASA)は、高性能な空飛ぶクルマ開発に向けた飛行検証を実施。8月27日から9月10日の期間で行われた検証では、Joby Aviation社が開発した機体(eVTOL型)の騒音分析を目的としている。Joby Aviation社が手掛ける空飛ぶクルマは、ヘリコプターに複数のローターを備えたシルエットで、離発着所から垂直に飛び立つことが可能。それに加え、バッテリーを動力源とすることから、eVTOL型と呼称される。

空飛ぶクルマの規制作りを見据えた飛行試験

 今回の飛行検証は、社会実装に向けた現実的なシミュレーションに使用する機体の性能検証となる。これは将来的に、空飛ぶクルマの規制基準の開発に提供する情報の取得や、航空タクシーの社会受容性の開拓を目指したものだ。

 Joby Aviation社は飛行試験計画として「飛行制御」「機体の騒音」「機体制御に関する通信方法」を試験項目にあげており、今回は機体の騒音分析が行われた。検証は50台以上のマイクを使用し、飛行中の放射音の多方向測定を行っている。取得したデータはヘリコプター、ドローン、そのほかの航空機の騒音と比較し、音の強度や特性を分析。そして、ノイズの可視データ生成に役立てていく。その後、現在の都市部のノイズデータと組み合わせ、空飛ぶクルマの騒音がどのように都市部に溶け込むかを検証する。

 機体は、6枚のプロペラを傾けることで垂直離着時と巡航飛行を両立しており、ブレードの数やブレードサイズ、先端速度を改善し、ノイズを最小限に抑えることに成功している。さらにはプロペラのピッチ角、回転速度を簡易的に調整することが可能で、ヘリコプターで生じるブレード騒音を抑制している。

 Joby Aviation社の空飛ぶクルマは最大航続距離 約240km、最高速度は約300km/h。4人乗りで操縦士を必要としない機体設計だ。2017年には1000回以上の飛行試験を完了しており、2023年に連邦航空局(FAA)の認証取得を目指している。

 今回の試験飛行について、NASA AAMミッション統合マネージャーのデイビス・ハッケンバーグ氏は、「これらの飛行試験は、現在の空域において、空飛ぶクルマを実装するために必要な規制基準の調査に役立つ。NASAは都市部やその周辺地域で、空飛ぶクルマによる乗客・商品の輸送サービスを手頃な価格帯で提供できると考えている」と話した。

 飛行検証完了後には、NASAとJoby Aviation社の音響専門家チームが共同でノイズを分析し、年内に調査結果を共有する予定だ。また、「機体の騒音」以外の試験項目やその他の機体試験は、2022年に実施するとしている。