2021年3月25日、船舶の検査・点検業務におけるロボティクス活用に向けた業界横断の取り組みとして発足した「検査・点検ロボット運用モデル検討会」は、2020年中の検討成果を中間報告書として発表した。
 この中間報告書では、ロボティクスの有効活用に向け、利用する側の海事業界関係者のニーズ、開発する側のロボティクス関連企業が有する技術のシーズを整理し、今後の検討対象を絞り込んでいる。

 ドローンに代表されるロボティクスによる検査・点検業務は、作業者の安全確保や省力化、精密度の向上、また新型コロナウイルス感染拡大をふまえた遠隔利用への期待などから、様々な分野で検討が進んでいる。高所や狭小空間が多い船舶についても、検査・点検業務での活用が期待されている。

 今回発表した中間報告書では、ロボティクスを利用する側である海事業界関係者(船社、修繕ドック、検査事業者、船級協会)の検査・点検、入出渠(船のドックへの出入り)、離着岸、修繕・改造工事、計測など、各々の業務におけるロボティクス技術への約50件のニーズ、および開発する側のロボティクス関連企業5社が有する技術のシーズを整理し、今後の検討対象の絞り込みに至った内容をまとめている。

 修繕ドックにおける就航船の検査現場見学や船外飛行試験、現場見学も実施。船外飛行試験では、ドローンを用いた盤木配置の確認の実現性を探るため、実際にエアロセンス社のドローンや対空標識を用いてドック上空から盤木測量を行った。

エアロセンス製のドローン(エアロボ:Aerobo)
エアロセンス製の対空標識(エアロボマーカー:Aerobo Marker)
エアロボが上空から撮影している様子

 検討会では、今後の検討対象として挙げた以下三点についてさらに具体的な検討を進め、船舶の検査・点検でのロボティクス活用による安全性向上への貢献に努める、としている。

1. ドローン(船内飛行、船外飛行)
2. 配管点検ロボット、マグネット式ロボット、ROV等(ドローン以外のロボット)
3. ステークホルダー間の情報共有

▼研究成果報告書(検査・点検ロボット運用モデル検討会)
https://www.classnk.or.jp/classnk-rd/report/2017/013.html

検査・点検ロボット運用モデル検討会

活動予定期間 :2020年8月~2021年7月
活動内容
1. ロボティクスに関するリテラシー向上を目的とした情報交換
2. 海事業界においてロボティクスを商用利用できるためのコンセプトの検討
3. 検討会での議論をふまえた概念実証の実施
目標とする成果 :業界としての協調領域を構築(運用モデルの確立)
メンバー :船社、修繕ドック、検査事業者、舶用機器メーカー、ロボティクス関連企業、研究機関、船級協会など