2021年3月4日、北海道電力および自律制御システム研究所(以下、ACSL)は、 非GPS環境である水力発電所の調圧水槽内で自律飛行が可能なドローンを開発したことを発表した。

ドローン機体外観正面

開発の背景

 調圧水槽は発電機の負荷遮断など急な出力変化によって発生する水撃作用(※1)を緩和するための設備で、内径が十数メートル・深さが数十メートルほどの円筒形の構造物だ。
 調圧水槽内壁の点検は、通常、調圧水槽の上部からの定期的な目視点検を実施して、経年劣化の有無などを確認している。しかし、より詳細な点検を行う必要がある場合は、命綱を装着した作業員が上部から吊り下がり、直接、ひび割れなどの状況の確認をするため、安全面や作業効率面に課題があった。

 北海道電力は、こうした課題を解決するため、近年、設備点検などで実用化が進んでいるドローンに着目し、研究開発分野で連携関係にある北陸電力、中国電力、四国総合研究所および沖縄電力の協力を得て、ACSLとともに調圧水槽内点検に活用できるドローンの開発を進めてきた。

 ACSLは、国産の産業用ドローンの開発について、用途特化型機体の開発を戦略の1つとして掲げており、その一つを応用することで、本調圧水槽内部を点検するドローンの開発を行ったという。

※1 水車の急停止により水圧管内の水流を急に締め切ったときに、水圧管内に強い衝撃と高水圧が発生する現象。

調圧水槽点検用のドローンの特徴

 調圧水槽内はGPSが届かず、かつ暗所である。こうした環境で、安定的にドローンを飛行させるために、ドローン自らが調圧水槽内にある構造物(ライザー管(※2)など)を目印に、自機との位置関係を計算しながら飛行することができる技術を開発した(特許出願中:特願2021-000814)。
 ドローンは調圧水槽内を上下・旋回飛行を繰り返しながら、内壁面全体を撮影する。

 また、今回開発したドローンは、国内で開発・製造しているため、情報セキュリティやサポート体制が万全であることも特長のひとつだ。

調圧水槽内を降下しながら壁面を撮影するドローン
ドローンで撮影した実際の画像

 北海道電力は、今回の研究開発により作業の安全性向上や点検期間の短縮を図り、カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの中でも安定供給に優れた水力発電所の一層の稼働率向上や、費用低減を進めていきたいとしている。

 両社は今後、ドローンの積極的な活用に向けて、GPSが利用できない屋内設備点検などにおいても、自律飛行が可能なドローンの開発について検討を進めていくという。

参考資料
水力発電所の調圧水槽点検用「非GPS対応自律飛行ドローン」の開発について
https://www.acsl.co.jp/admin/wp-content/uploads/2021/03/Reference-Development-of-Autonomous-Drones-for-Non-GPS-Environments.pdf

※2 調圧水槽内にある口径の小さい管であり、調圧水槽本体より先行して水撃作用を緩和する設備。