クリーク・アンド・リバー(以下C&R)は2020年、ドローンを開発するサイトテックと共同で、山間部を中心に、主に5つの分野(物流・輸送、林業、土木・建設、医療・災害、計測・調査)で最大離陸重量25kg以上の無人航空機を活用した重量物運搬の検証を実施したことを、2020年12月23日に発表した。

 現在、林業、土木建設、災害救助、計測・調査などにおいて、山の急斜面での運搬作業は人にかかる負担やリスクが大きく、作業効率化やコスト削減を目的に大型ドローンの導入が求められている。また中山間地での物流においても、公共機関が行き届かないことやドライバー不足を背景に、ドローンが新たな輸送手段として期待されている。しかし、山間部では突風が吹いたり霧や雨といった気候の変化が激しく、電波障害も起こりやすいことに加え、安全な離発着場所の確保も難しいといった課題がある。

 C&Rは今後、ドローンを活用した重量物運搬の実運用化に向け、2020年に実施した検証データやノウハウをもとに、定常的な運航実績を積み重ねながら、機体やオペレーションの改善、UTMを始め周辺システムとの連携、環境整備などを関連する企業や行政とともに進めていくとしている。

2020年に実施した主なプロジェクト

【主なプロジェクト】
(1)物流・輸送:八ヶ岳連峰における山小屋への物資輸送
(2)林業:苗木や林業資材(滑車やワイヤーなど)の運搬
(3)土木・建設:作業場へ建築資材(長さ4mの鉄パイプや足場板)運搬
(4)医療・災害:緊急時に陸上輸送が困難な場面を想定した医薬品搬送/消防隊との水難救助共同訓練
(5)計測・調査:グリーンレーザーやガス分析機器などを搭載しての計測・調査

物流・輸送:山小屋への日用品輸送

時期:9月上旬~11月下旬、場所:長野県茅野市(八ヶ岳連峰)
 標高2,500m前後にある山小屋へ(片道約2km、最高高度差約640m)、米やお酒、アイゼンやビールサーバー、使用済みシーツやゴミ回収など安全で燃費の良い最適な飛行ルートを設置し、最大15kgの日用品を輸送。

山小屋への物資輸送の様子

協力:黒百合ヒュッテ、蓼科山荘、蓼科山頂ヒュッテ、Local.Video.Shop.

林業:苗木や林業資材の運搬

時期:5月、場所:岐阜県郡上市
 往復2kmの距離を自動飛行で苗木や支柱(TUBEX)の運搬、また土砂が崩れて足場の悪い急斜面な山の中腹に、林道から1日300kgのイボ竹を上げる検証。

時期:11月、場所:長野県北安曇郡池田町
 木杭・滑車・ワイヤー・チルホール(手動ウインチ)などの林業資材(最大20kg)を片道約300m、谷間を挟んで運ぶ等の林業関係者向けデモンストレーションを実施。

林業資材運搬の様子

主催:
・岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアム、C&R
・長野県林業職員協会、長野県森林組合連合会

土木・建設:土木建築資材の運搬

時期:6月、場所:山梨県南巨摩郡早川町
 南アルプス北岳の支流樽沢の補修業務にて、これまでヘリコプターで運搬していた単管パイプ(4m×2本=22kg)や足場板など建築資材を往復約1,400m、ピストン輸送によって3日で約1tを運搬。

主催:久保田組、協力:山梨県企業局

医療・災害:陸上輸送が困難な場面を想定した医薬品搬送の実証実験

時期:10月、場所:広島県広島市安佐北区
 過去、豪雨による土砂災害で孤立状態に陥ったことのある広島県安佐北区で、陸上輸送が困難な場面を想定した医薬品(15kg)搬送の実証実験を実施。距離約300m、高度差100mでの目視外となる条件下、離陸から荷下ろし、帰還・着陸まで全自動で、中身の品質を維持した状態で届けることに成功。

主催:大手医療機関、協力:安佐北区役所、大林学区自主防災会連合会、大林愛林会、広島工業大学 田中健路教授

医療・災害:消防隊とのドローンを活用した水難救助共同訓練

時期:11月、場所:山梨県南巨摩郡身延町(本栖湖)
 昨今の大雨・ゲリラ豪雨による、川や湖での水難事故を想定した救出・救助訓練において、ドローンで水に浮かぶ救助用ロープや浮輪、20kgとなるブイの投下を行い、特別救助隊員との連携による共同訓練を行った。

主催:峡南消防本部

計測・調査:大気中のガス濃度を測定するモニタリング試験

時期:8月、場所:山梨県南巨摩郡身延町(サイトテック練習場)
 FTIRガス分析装置をドローンに取り付け、25m、50m上空各3地点においての、大気中のガス濃度(主に二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、アンモニアなど)を測定するモニタリング試験を実施。

主催:大起理化工業

実証実験で使用した大型ドローン

 サイトテックが独自で開発・製造・販売している機体。パートナーシップを拡大し、継続的なバージョンアップを行っている。

YOROI6S1750F

 カーボンシェルを採用した堅牢かつ軽量の機体で、最大積載重量は30kg。防水性、耐風性に優れ、プロペラ6枚のため1枚破損しても姿勢を保つことができる。運搬リール、計測器、散布機、特殊カメラなどのユニットを取り付けることで様々な用途・シーンで利用できる汎用型タイプ。

YOROI6S1750F


KATANA12D1750F

 上下プロペラ12枚、最大離陸重量140kgの重量物運搬用ドローン。要望に合わせカスタマイズも相談可。フライトコントローラーはPixhawkを使用。

KATANA12D1750F


 C&Rは、レベル4(有人地帯における目視外飛行)の実現を見据えつつ、まずはレベル3(無人地帯における目視外飛行)となる山間部での検証を繰り返す中で、現場の声を拾いあげながら課題を明確にし、各専門領域におけるパートナーとともに今後もドローンの社会活用を積極的に提案・推進するとしている。