2020年11月20日、綜合警備保障(以下、ALSOK)と京浜急行電鉄、NTTコミュニケーションズの3社はコンソーシアムを組成し、ALSOKが総務省から受託(※1)した、令和2年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係る防犯分野におけるローカル5G等の技術的条件等に関する調査検討の請負(遠隔巡回・遠隔監視等による警備力向上に資する新たなモデルの構築)」に基づく実証実験を推進することで合意したことを発表した。

※1 総務省報道発表:令和2年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」における実証内容の決定(令和2年10月16日)

背景

 犯罪の多様化、体感治安の悪化といった社会情勢の変化を受け、警備に対するニーズが高まっているが、施設警備業務(施設等における巡回監視や管理業務等)は、生産年齢人口の減少や労務費の高騰などを背景に、これまでのマンパワーを中心とした警備モデルから変革を求められている。

 ALSOKは、高度な警備サービスの実現と省人化による効率的な警備サービスの提供を目指し、これまでにも総務省の「第5世代移動通信方式(以下5G)の実現による新たな市場創出に向けた総合的な実証試験」に参画(※2)し、5Gの特長である超高速・超低遅延通信を利用した防犯カメラの高精度ライブ画像の共有や画像解析による異常検知などの検証を行ってきた。

 本実証はこれらの検証結果を踏まえ、人員不足を補いながら警備に対するニーズや社会的需要に対応するため、新たな技術の活用による巡回や監視等の警備業務を発展させた「遠隔巡回・遠隔監視等による警備力向上に資する新たなモデルの構築」を目指した実証を行う計画である。

※2 ALSOKニュースリリース:5Gを活用した高度な警備サービスの実現に向けた実証実験を実施(総務省「5G総合実証試験」への参画)(2017年5月23日)

実証概要

 総務省は、2019年12月に「ローカル5G」(地域のニーズや多様な産業分野の個別ニーズに応じて、様々な主体が柔軟に構築し利用可能な第5世代移動通信システム)制度を整備し、普及に向けた取り組みを推進している。

 本実証では、①ローカル5G等を活用した地域課題解決を実現するモデル構築に関する実証(以下、課題実証)、②遮蔽物の多い閉鎖空間におけるローカル5Gの電波伝搬等に関する技術的検討(以下、技術実証)を実施する。

(1)実証場所

京浜急行電鉄 羽田空港第3ターミナル駅

(2)実証期間(予定)

2021年1月~

(3)課題実証

 高精細4K映像を用いたドローンやロボットによる自動巡回・遠隔巡回を行う。また、行動検知AIによる不審行動や歩行サポートが必要な人の自動検知を行うシステム、対処に最適な警備員へ指示を行うALSOKスタッフ等連携システム、および全ての情報を集約する遠隔統制席(監視センター)を構築する。これらのシステムを用い警備員等への最適指示といった警備プロセスを、超高速・超低遅延などの5Gの特長を生かし、警備分野におけるローカル5G等の活用策とその導入効果等を明らかにすることを目指す。

実証実験システム構成図

(4)技術実証

 羽田空港第3ターミナル駅において、遠隔巡回・遠隔監視を行う本実証を実現するローカル5GシステムをNTTコミュニケーションズが構築し、遮蔽物の多い屋内空間におけるローカル5Gの電波伝搬等に関する実証を実施する。

警備用途におけるローカル5G活用のメリット

① 外部からの侵入や無線のなりすましに強い、高セキュリティな通信が可能
② 高精細4K映像を送信しながら移動するドローン・ロボットと、安定した超低遅延通信が可能
③ 他の無線電波に影響されず、独立して安定した運用が可能

試験効率・実証コストを考慮した検証システム構成

① ハンドオーバー(アンテナ間の繋ぎ代わり)を検証するため、複数アンテナによる構成
② データ通信の処理(UPF)を実験実施場所に配置することで低遅延性を確保
③ 制御通信の処理(5GC)をクラウド型で配置することで、将来的に複数拠点での共用が可能

今後の取り組み

 3社は、今後さらに高まる警備ニーズへの対応と、従来のマンパワーを中心とした警備モデルの変革を目指し、ローカル5Gの活用によって警備プロセスを高度に発展させることで、安全安心な社会づくりに貢献していく、としている。