電子認証サービスを展開するGMOグローバルサインは、ドローン・エアモビリティ特化型ベンチャーキャピタルのDRONE FUND(以下ドローンファンド)が出資するドローン専用メーカーであるプロドローンと、空飛ぶクルマを開発するSkyDrive(以下スカイドライブ)の各社と、ドローンの社会実装に向け、通信・制御のセキュリティ強化における技術供与に関して、2020年11月20日に基本合意したことを同日発表した。

技術供与基本合意の背景・概要

 昨今、政府主導のもと小型無人機(ドローン)の社会実装に向けた取り組みが官民一体となって進められている(※1)なか、ドローンの運用における機体・操作システムの乗っ取りや、機体から送られる通信データの改ざん、盗聴など、セキュリティリスクへの対策が課題となっている。そのため、通信データのセキュリティを強化する技術としてSSLに注目が集まっている。

 GMOインターネットグループでは、企業のIT活用・DX化に必要となるインターネットインフラサービスの提供を主力事業としている。こうしたなか、今後発展が期待される次世代モビリティ産業に着目していたという。また、グループ企業のGMOグローバルサインは、SSLサーバ証明書をはじめとするPKI技術(※2)を世界的に展開する、国内基準と世界標準の両方を満たせる企業である。

 そこでGMOインターネットグループはGMOグローバルサインを通じて、ドローンの開発・運用の事業に携わるドローンファンドが出資するプロドローンおよびスカイドライブの各社と、ドローンの通信・制御のセキュリティ強化分野での技術供与に関して基本合意した。

 具体的には、GMOインターネットグループからはドローンのコントローラー、機体の認証と通信の暗号化、またドローンからのデータ送信の暗号化などに関して、GMOグローバルサインが持つセキュリティ技術に関する幅広い情報提供を行うほか、必要に応じて実証実験向けに電子証明書の無償提供を行う。他方、プロドローンおよびスカイドライブの各社からは、ユーザーニーズに関する情報提供を受ける。これにより、セキュリティが強化されたドローンの社会実装や、空の交通インフラ整備に対するGMOグローバルサインのPKI技術ノウハウの活用が期待される。

※1 物流関連の小型無人機等に関する政府の取組過疎地域等におけるドローン物流ビジネスモデル検討会 第1回検討会(平成31年3月7日)参考資料、国土交通省)
※2 PKI :Public Key Infrastructure(公開鍵暗号基盤)の略で、公開鍵と秘密鍵のキーペアからなる「公開鍵暗号方式」という技術を利用し、インターネット上で安全に情報のやりとりを行うセキュリティのインフラ(基盤)のこと。

次世代モビリティ実現に向けた動き -ドローンの社会実装-

 日本国内では現在、経済産業省と国土交通省が中心となり、次世代のモビリティ「空飛ぶクルマ」の実現に向け、官民一体となった制度や環境整備、技術開発に関する議論が進められている(※3)。空飛ぶクルマとは“電動・垂直離着陸型・無操縦者航空機などによる身近で手軽な空の移動手段”のことで、遠隔操作や自動制御によって飛行できるドローンをベースにした開発が進んでいる。本取り組みのロードマップ(※4)では、2020年代半ばの空飛ぶクルマ事業として商業利用の開始、2030年ごろの本格的な実用化が目標として掲げられている。空飛ぶクルマは、物流・農業・防災などあらゆる産業での活用が期待されており、ロードマップには2030年以降の未来像として無人のドローンが荷物を運んでくる、空飛ぶクルマで渋滞のない空を移動する様子が描かれている。

 一方、ドローンの社会実装に向けた取り組みも政府主導のもと官民一体となり進められている。商用利用をはじめ、社会的課題の解決に貢献するドローンの実現に向けた議論が行われており、現在、最新のロードマップ(※5)における2022年の目標である、小型無人機(ドローン)の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた環境整備・技術開発の段階まで進められている。

※3 空の移動革命に向けた官民協議会(経済産業省)
※4 “空飛ぶクルマ”の実現に向けたロードマップを取りまとめました」(2018年12月20日、経済産業省)
※5 空の産業革命に向けたロードマップ2020」(2020年7月17日、小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会)

関係者コメント

ドローンファンド 千葉功太郎氏
 DRONE FUNDは、ドローンとエアモビリティ(空飛ぶクルマ)関連の国内外44社への投資を実行してまいりました。その一層の社会実装に向けて、このたびGMOグローバルサイン様と技術供与の基本合意が実現しましたこと、この業界のみならず日本社会にとって大きな前進となるはずです。2号ファンド投資家様であるGMOインターネットグループ代表の熊谷様と千葉はともに航空パイロットである同志として、そして大前はドローングラファとして、空の未来と可能性を強く確信しております。これを契機にさらに多くのスタートアップを巻き込み、来たる「ドローン・エアモビリティ前提社会」実現のため、空のセキュリティの確立に注力してまいります。

プロドローン 代表取締役社長 河野雅一氏
 空の産業革命を進めていくためには、情報の秘匿化は必須であり、今後、目視外飛行(レベル4)が当たり前となる社会において不可欠な要素です。PRODRONEでは、すでにレベル3に対応する機体も各所の実証実験で飛行しており、実運用時における機体操作情報、運輸物資情報、取得データ、顧客や課金データなどの秘匿技術開発を進めています。今回、GMOグローバルサイン株式会社と技術供与の基本合意が実現できたことで、より一層のセキュリティ強化に取り組めることを嬉しく思います。

SkyDrive 代表取締役CEO 福澤知浩氏
 GMOインターネットグループ様のコーポレートステートメント「すべての人にインターネット」を拝見した時、我々のゴールは「すべての人に空の移動」だと強く思いました。インターネットという未来の当たり前を創りあげた方々と、空の産業創造をご一緒出来る事、大変心強く思います。「空飛ぶクルマ」「ドローン」が安全に運航し、社会に受入れられるために、セキュリティは必要不可欠なものです。GMOグローバルサイン様と技術供与の基本合意が実現できること、心より感謝申し上げます。

GMOグローバルサイン 代表取締役社長 中條一郎氏
 弊社の培ってきた技術のノウハウが、「空×IT」で推進する次世代のモビリティという、全く新しい産業で役にたてることに非常にワクワクしております。今後のドローンの社会実装に向けて、セキュリティ強化の面で貢献できるよう、今後の協議をすすめてまいります。