2020年11月16日、鹿島は、竹延と壁面吹付塗装ロボットを共同開発し、実工事に初適用したことを発表した。本ロボットの適用により、熟練塗装工と同等の塗装品質を確保しながら、塗装作業全体に要する人工(にんく)を従来の人による作業と比べて約3割削減した。

壁面吹付塗装ロボットによる施工状況

開発の背景

 建設業界では、就労者の高齢化や若年層の入職者不足による将来的な就業者数の減少が見込まれており、生産性の向上が喫緊の課題となっている。一般的な室内での壁面吹付塗装作業では、塗装面積の広さに加え、塗装時に塗料の垂れが生じやすく重ね塗りが必要となるため、長時間かつ繰り返しの作業となるなど、生産性の向上が求められていた。
 同社が推進中の「鹿島スマート生産」では、繰り返しや苦渋を伴う作業、自動化により効率や品質にメリットが得られる作業などを対象に、自動化・ロボット化を進めている。室内での壁面吹付塗装作業もこれに該当することから、ロボットの開発を進めてきた。

壁面吹付塗装ロボットの特長

・離隔センサにより壁との距離を一定に保ちつつ、移動しながら吹付ノズルを上下して壁面を塗装。
・一定速度、一定角度で塗料の吹付ノズルを動かすことにより、1回の吹付で膜厚を確保。
・1時間あたり110㎡以上の壁面を塗装可能。
・吹付塗装の機材に汎用品を採用しており、部品交換などの保守が容易。
・熟練塗装工と同等の高い塗装品質を実現。

 端部などロボットによる塗装の難易度が高い部位については従来どおり人が作業することとして、開発期間の短縮、製作コストの抑制、構造の簡素化、操作の簡略化などを実現している。なお開発にあたっては、竹延が従前から取り組んでいた、熟練塗装工が持つ感覚的な技の数値化やマニュアル化などのノウハウが活かされている。

各部の機能

現場での実適用とその効果

 本ロボットを、兵庫県内の建築現場におけるALC壁(475㎡)の部分塗装に実適用した。下地処理や養生などを含む塗装作業全体の人工は、従来の人による作業が4.8人日であることに対して3.2人日と、約3割削減できた。また、塗装品質についても熟練塗装工と同等の水準を確保した。

左:現場での吹付作業、右:ロボットへの作業指示状況

今後の展開

 今後、本ロボットの全国の建築現場への適用を推進し、人とロボットの協働による吹付塗装作業のノウハウを蓄積するとともに、現場への適応性を高めてロボットによる施工範囲の拡大を図っていく、としている。