2020年11月12日、トラジェクトリーとスカイピークは、浜松市天竜区春野町で実施される「春野医療MaaSプロジェクト」の実証実験に参加することを発表した。本プロジェクトは、オンライン診療・オンライン服薬指導によって処方された医薬品をドローン等で配送することで、中山間地域の課題を解決することを目的としている。なおこれは、浜松市が経済産業省の「地域新MaaS創出事業」における先進パイロット地域の一つとして選定され実施するものである。

春野医療MaaSプロジェクト 趣旨

 本プロジェクトは、オンライン診療・服薬指導・ドローン等による医薬品配送による地域課題解決を目指している。浜松市のなかでも高齢化が進行している中山間地域の天竜区(高齢化率約42%)では医師不足に加え、高齢者の通院困難等の課題がある。そこで、浜松市、地域の医師会、民間企業が連携し、オンライン医療サービスと連携したドローンによる医薬品配送サービスの実証実験を行うこととなった。

(1)移動診療車によるオンライン診療
(2)オンライン服薬指導から薬剤の配送

 トラジェクトリーとスカイピークは(2)に相当するドローンを用いた医薬品配送の実証を行っている。

 本プロジェクト実装は、首相官邸が発表する「空の産業革命に向けたロードマップ2020」における「レベル4」有人地帯での目視外かつ補助者なしの自律飛行(自動運転)実現を目指している。これにより、高齢者は将来的に自宅にいながら医薬品を手にすることが可能となる。

春野医療MAASプロジェクト デモムービー

実施概要

期間 :2020年10月19日~2020年12月下旬

実施エリア :静岡県浜松市天竜区春野町

実験内容
・離発着地点に関する検証
 安全を担保した上で実際にドローンによる医薬品配送が必要な患者宅を着陸地点として、各ドローン物流にとって必要な離発着条件(地形や広さなど)を検証する。
・飛行経路に関する検証
 ドローンごとに機体スペック等が異なるため、安全かつ最適な飛行経路は異なる。そのため、近隣の高圧鉄塔や高圧線の配置を踏まえた上で実際に飛行実験を行い、各ドローン機体にとって最適な飛行経路(障害物との距離や高度など)を検証する。
・医薬品受け渡しに関する検証
 医薬品の種類、離発着地点および飛行経路を考慮した輸送サービス範囲、病院側のドローンへの荷物積み込み作業負担および安全性、患者側のドローンからの荷物取り外し作業負担および安全性、患者側作業の代替手段、全体的な経済性などを検証する。

ドローン医薬品配送候補エリア
生成した3D地図の一部

プロジェクト全体の実施体制

代表団体
・浜松市

参加団体
・トラジェクトリー(協力企業 スカイピーク):3D地図作成・ドローンによる薬剤配送
・磐周医師会:医療関係者などとの調整
・仁成堂小澤医院:オンライン診療、オンライン服薬指導
・MONET Technologies:企画・運営、移動診療車および運行システム提供
・杏林堂薬局:オンライン服薬指導、薬剤配送
・博報堂:全体報告書作成
・浜松市モビリティサービス推進コンソーシアム:社会実装に向けたコンソーシアムでの情報共有

プロジェクトの背景

 浜松市は人口減少・超高齢化社会に向けて、昨年10月に「デジタルファースト宣言」を実施し、デジタル・スマートシティ推進により、持続可能な都市づくりを目指している。今年4月には、分野間連携およびデータ利活用を促進するため「浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設立した。

 モビリティ分野では、昨年度「スマートモビリティチャレンジ推進協議会」に加盟し、全国他都市との知見の共有を進めるとともにモビリティプラットフォームを構築しているMONET Technologiesと連携協定を締結し、モビリティ推進の体制を強化。さらに今年4月には「浜松市モビリティサービス推進コンソーシアム」を設立し、官民連携および異業種連携による地域の移動手段の確立や移動とサービスの連携を推進している。

 今年度中に、今後のMaaS政策推進の方向性や、ロードマップを示す浜松市MaaS構想の策定を予定しており、本プロジェクトは浜松市モビリティサービス推進コンソーシアムと連携して進めていく。

今後の展開

 本プロジェクトは、ドローンの社会実装に向けた1つのユースケースであり、今後デジタル・スマートシティ推進を目指す浜松市や、各協力企業と連携し、レベル4(有人地帯での目視外飛行)の実現を見据え、同市におけるさらなるドローンの利活用を推進する、としている。