2020年11月11日、自律制御システム研究所(以下ACSL)は、地震や台風などの災害時に、被災地への防災・災害仕様ドローン(ACSL-PF2)の無償提供による支援を開始することを発表した。
支援開始の背景
2019年10月、台風19号が関東地方に上陸し、記録的な大雨となった。東京都でも初めての大雨特別警報が発表され、西多摩郡奥多摩町日原地区は道路が崩落したことにより孤立状態となった。集落へは人も車も行くことができず、早急な支援が難しい状況が発生していた。ACSLは、台風19号の被害に伴う東京都からの要請を受け、2019年10月28日にANAホールディングス、NTTドコモ協力のもと、西多摩郡奥多摩町日原地区へ緊急物資輸送を実施(※)。同社のドローンで生活必需品である歯ブラシや歯ブラシ粉など届けることで、大きな被害を受けた地域を支援することができた。
地震や台風などの自然災害が発生した際、被災した地域には自衛隊が駆け付ける。また、被災した地域の地方自治体も住民を守るために対応を行う。そうした自衛隊や地方自治体では、近年、災害時にドローンが活用され始めている。災害時にドローンを活用するメリットとしては、立ち入りが困難である被災地においても状況調査が可能なことや、その情報を現場ですぐに見られることにある。一方で、実際にドローンを使おうとしても操作が難しくすぐに使えなかったり、維持管理費用が負担となるため購入を断念するなどの課題がある。
ACSLはこうした災害時に対応する自衛隊や地方自治体や企業が抱える課題を、同社の技術を通じて解決し、2019年10月に実施した被災地支援の経験から、災害時にドローンを活用することでより多くの被災地を支援していきたいと考え、被災地への防災・災害仕様ドローンの無償提供による支援を開始する。
今後の取り組み
2022年の有人地帯(都市を含む地域)における目視外飛行(レベル4)に関する規制整備に向けてドローンがより利活用されるためには、防災・災害分野での実用化に対する取り組みを加速する必要があるという。同社は2020年8月発表の中期経営方針「ACSL Accelerate FY20」において、用途特化型機体(小型空撮、中型物流、煙突点検、閉鎖環境点検)の開発と量産化を戦略の1つとして掲げている。その中でも小型空撮ドローンや中型物流ドローンは防災・災害分野でも活躍できる機体であるため、用途特化型機体の開発を災害支援に繋げていく。
今後ACSLは、ドローンを活用した被災地への支援を全社をあげて実施。また、2020年11月8日に開始された都政課題解決スタートアップピッチイベント「UPGRADE with TOKYO」の第8回『テクノロジーを活用し様々な災害から都民を守る』におけるピッチ審査に優勝したことを通して、防災・災害分野におけるドローンの社会実装を推進するための活動に積極的に取り組んでいく、としている。