GOCCO.は、徳島大学 佐原理准教授の監修のもと、地上からバルーンを使って上空30,000mの成層圏へ小型モジュールをリリースして回収する、成層圏への往復便サービス「shuttleD(シャトルド)」の募集を、2020年8月10日(月)より開始したことを同日発表した。

成層圏をもっと身近に

 上空30,000m、宇宙空間の入り口である成層圏。旅客機が飛行する高度のさらに上空、人間や、あらゆる生命体が生存不可能とされる極限環境である。地上から向かうには、強風の吹き荒れるジェット気流や、-70度にもなる対流圏を越える必要がある。その成層圏を身近にするのが「shuttleD」である。

成層圏への往復便

 shuttleDでは、特殊につくられた「shuttleDモジュール」に検体を搭載。それを気象観測用バルーンに連結させて成層圏までフライトさせ、パラシュートで安全に海洋上へ着水したものを回収する。ヘリウム気球を使った成層圏へのリーチと実験モジュールの海洋上での回収を数多く成功させてきたチームがこのオペレーションを主導し、上空30,000mという環境における様々な科学実験をより安価に実現する。

成層圏の小さな実験室「shuttleDモジュール」

 shuttleDモジュールは、小さな実験室である。特殊フィルム加工によって防水性を保ちながら室外との通気性を確保しており、検体シャーレ(直径90mm、高さ20mm)を最大10個搭載可能。利用者はシャーレ1個分からスペースを借りることができ、シャーレ内に自由に検体を配置して成層圏までフライトさせることが可能である。海洋着水時は、外装フレームの浮力によって本体を常に海面より上に露出する状態をキープできるので、モジュールへの海水の浸水は全くない。

成層圏フライトへのプロセス

 shuttleDでは、成層圏までフライトさせる検体、また期待する実験結果について十分に把握しながら、フライトまでのスケジュールを立てると同時にshuttleDモジュールの準備を進める。そこからフライト候補日の天候、場所に関する精細なデータを常時収集して、地上~上空30,000m~海洋着水までの成層圏往復フライトシミュレーションを綿密に行い、shuttleDモジュールの成層圏へのフライト日時を決めていく。

フライトオペレーション

 管轄航空事務所および海上保安庁の許可をはじめ各種法令の遵守のもと各種飛行許可を取得の上、フライトオペレーションを実行する。フライトオペレーションは、バルーンをリリースする地上地点のチームと、成層圏まで到達し海洋着水したshuttleDモジュールを回収する海上地点の2チームに分かれて実行する(海上地点へは漁船で移動)。海上にて回収したshuttleDモジュールに付随する基本的なデータについては以下。

検体モジュール映像データ
 shuttleDモジュールの状態を複数側面より映像記録する。基本的にはアクションカメラでの撮影になるが、特殊オーダー(その他機材の取り付け)は相談。

フライトログ/航路・高度・時間
 GPSのトラッキング情報、高度、ヘリウム積載量などより、フライトを立体的にアーカイブする。

モジュール内温度・湿度・気圧ログ
 shuttleDモジュール内での温度、湿度、気圧の変化状況を記録する。特殊オーダー(紫外線や宇宙線等の計測)は相談。

shuttleD進行プロジェクト第一弾

Stratospheric Food~成層圏環境を生き抜いた酵母菌達~

 「新しい食」の開発を目指し、shuttleDモジュールを特殊グロッセリーラックとして成層圏へと運搬するshuttleDプロジェクトの一つ。本プロジェクトで搭載するのは各種酵母菌。成層圏から地上へ持ち帰った酵母菌から「宇宙パン」と「宇宙ビール」を開発している。現在 “プロトタイプ” を検証中で、明らかに「何かが違う」食品群が出来上がってきているという。
 地上とは全く異なる環境である成層圏に食品をフライトさせることで、その成分や味わいに大きな変化が起こる可能性を探るべく「新しい食」に興味を持つ研究者も募集している。(協力:coneru、神山ビール https://kamiyamabeer.com/

shuttleDチーム

GOCCO.

 「新しい楽しさの可能性」を追求しながら、これからのものづくり事業を発展させ続けるメディア制作会社。独自開発による導電性インクを使った紙ソリューション「PITシステム」はカンヌ広告祭メディア賞などを受賞(2014)。ソフトウェア開発を中心に、ハードウェア開発からプロトタイプ制作、教育、イベントまで幅広く事業展開している。

ディレクター :萩原大輔 Daisuke Hagiwara
ハードウェアエンジニア :坂本隆盛 Ryusei Sakamoto
ソフトウェアエンジニア :遠藤孝則 Takanori Endo
特殊映像制作 :駒月義端 Gitan Komatsuki、田嶋大輝 Taiki Tajima(GOGIC)
プロフェッショナル・ドローンオペレーター :駒月麻顕 Maki Komatsuki

監修 :佐原理 Osamu Sahara(徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 准教授/学術博士)
日本初となるiPhoneを成層圏に送り太平洋上での回収に成功。日本でも数少ない成層圏での気球運用スペシャリスト。2012年より太平洋上での科学実験モジュールの回収プロセスを開発し、成層圏での映像撮影および科学実験サンプルの回収を可能とした。局地研究のプラットフォームとして多様な研究開発を行っている。

協力 :三木健司 Kenji Miki(東京工業大学 研究員/農学博士)

公式サイト/問い合わせ

URL https://shuttled.studio.design/
問い合わせ :shuttled@gocco.co.jp