2020年9月23日、日本航空(以下JAL)とMatternet(本社:Mountain View, California)は、Matternetが開発するドローン「M2」を用いた医療物資輸送分野における新規事業の創出などを目的として、日本における市場調査や事業参画に向けた業務提携を締結し、将来のドローン医療物資輸送の事業化を目指すことを発表した。

ドローン M2
Matternetが開発中の、M2が発着可能な荷物受け取り用のステーション

 物流業界では、小口配送の増加やドライバー不足、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた「新しい生活様式」への対応といったさまざま課題解決に加えて、過疎化のすすむ離島や中山間地域、慢性的に交通渋滞が発生する都心部における医薬品などの緊急物資の輸送手段の確保に、ドローンを用いた配送サービスの活用が期待されている。

 今般、医薬品他緊急物資の輸送に関する実証実験(*1)や、医療分野を中心にさまざまな企業、医療機関とドローンを使用した物流サービスの展開に取り組んでいるJALと、自社開発の自律飛行が可能な運航システムとM2を用いて、検体や医薬品などの輸送事業をスイスとアメリカで展開し、その実績とノウハウを持つMatternetは、日本の医療分野の物流市場調査や事業参画に向け本提携を締結した。

 両社は本提携を通して、日本の医薬品や検体、血液製剤といった迅速な配送が求められる医療分野の物流に関する各種調査や将来の事業参画に向けた取り組みを協力して実施する。また、先月採択された「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」(*2)でも、M2の使用を検討しており、実証実験を通して物流課題の解決と持続可能な事業構築を目指すとしている。

*1 2020年1月24日付 JALプレスリリース 「JALと兵庫県養父市が連携協定を締結、ドローンを用いた地域課題解決を目指す」
*2 2020年8月31日付 JALプレスリリース「「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」に参画」


【提携の概要】
・日本の医療分野の物流に関する共同調査
・ドローン物流サービス事業化の推進に向けた賛同企業の参加・協力の依頼
・「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」をはじめとする、実証実験に向けた検討

 JALは、これまでの空の移動に関わる運航ノウハウを活用し、空飛ぶクルマなど次世代エアモビリティの運航プラットフォームの構築を目指す。また、次世代エアモビリティサービスの提供を通して、災害対応や医療などの分野で地域の課題を解決し、SDGs達成に向けた取り組みを推進する、としている。

 Matternetは、都市部においてドローンを用いたオンデマンド配送を行う最先端の技術を開発してきた。2017年3月にスイス市街地でのドローン物流に向けた商用運航を承認された世界初の企業となった。 2019年10月には物流大手のUPSとドローン配送サービスをアメリカの医療システムに提供するパートナーシップを発表し、現在スイス、アメリカにおいて1万回を超える商用飛行の実績を重ねている。ドローン技術により、迅速で予測可能な医療物流を実現し、医療の向上とオペレーションの改善を目指す。

SDGs:今回のテーマに当てはまる目標
参考動画:The New Matternet Station(Matternet)