2020年9月8日、日立システムズは、ドローンの操縦や撮影代行、撮影した画像の加工と診断、データの保管・管理、業務システムとのデータ連携をワンストップで支援する「ドローン運用統合管理サービス」を強化することを発表した。

 具体的には、ドローンで撮影した複数枚の画像を集約した構造物全体の画像データの作成、および “ひび” の長さ・幅の自動計測、“さび” の自動検出、損傷図(*1)形式のレポート作成が可能となる。これにより、点検後の診断・報告において、従来は画像一枚一枚から損傷箇所を確認し、手作業で行っていた損傷図の作成工数の削減が可能となり、点検業務の効率化を実現する。

*1 損傷図(別名:旗揚げ図):点検を実施する企業や建設コンサルタント企業が点検結果報告として作成する図面。構造物のどの位置にどのような損傷があるかを図にして記載したもの。

サービス強化の背景

 昨今、日本では少子高齢化の進展による労働力不足や、作業員の技術レベル維持と伝承、人員確保などが大きな課題となっている。ビルや橋梁など構造物のインフラ点検においては、国の法令や点検要領の改訂などが進んでおり、点検を実施する企業や建設コンサルタント企業などは業務効率化や品質の維持を目的にドローンをはじめとするロボットやAIの活用が開始されている。

 しかし、損傷図の作成においては、ドローンで撮影した大量の画像から作業員が手作業で “ひび“ 割れなどの損傷箇所を確認するなど点検作業後にも多くの時間を費やしており、正確に効率よく作業を実施できる仕組みが求められていた。

 こうした背景を踏まえ「ドローン運用統合管理サービス」について、点検業務の効率化をサポートする機能を2020年9月8日から提供開始する。

サービス詳細

 日立システムズの「ドローン運用統合管理サービス」は、国がめざす3Dデータを活用した業務効率化に追従し、2次元画像(写真)から構造物全体の3次元モデルを生成し、構造物の劣化箇所の位置関係をひも付けて管理する「3次元管理台帳」や、「AIによる損傷箇所の抽出」などの機能をサポートしている。

 今回強化した機能では、ドローンが構造物を撮影した部分画像をもとに、おのおのの画像に生じるゆがみなどを補正しつつ全体画像を自動合成し、その中での “ひび”、“さび” などの位置の把握を可能にした。これにより、損傷箇所が構造物のどの位置に存在するか容易に把握することができる。さらに、AIの活用によりコンクリート “ひび” の長さや幅を自動的に計測したり、“さび” を自動的に検出したりする機能を追加した。画面上に自動計測・検出により表示された損傷結果に対し、クラックスケール(*2)を表示することで実際に作業員による計測・確認や、構造物全体の画像上に重ねた状態で任意の大きさに拡大・縮小して詳細に確認することも可能で、最終的にはレポートとしても出力できる。

 これにより、点検後の診断・報告において、構造物の全体像から損傷箇所の確認や点検結果として提出する損傷図の作成が容易となり、点検業務全体の効率化を実現する。日立システムズの調査結果では、点検後の診断・報告書作成に2~3日要していた作業工数を半日に短縮するなどの効果が出ている。

*2 クラックスケール:ひび割れ(クラック)の状態やクラックの長さや幅などを計測するための定規。

 さらに、画面上の言語表記に今回より英語表示を追加したほか、価格体系には、画像枚数やディスク容量を抑えてサービスが利用可能な「スモールスタート利用モデル」を新たに追加した。

 今後も日立システムズは「ドローン運用統合管理サービス」の提供を通じて、世界中の社会インフラの適切な維持管理と、安全・安心な社会の実現に貢献していくとともに、国や地方自治体、社会インフラ事業者向けに幅広く拡販し、2021年度までに累計300社以上への導入をめざす、としている。

今回強化した「ドローン運用統合管理サービス」のイメージ


価格 (税抜)

・通常利用モデル(¥100,000/月~)
・スモールスタート利用モデル(¥50,000/月~)
※構造物全体画像を生成する画像枚数 300枚/月まで、ストレージ容量100GBまで、損傷検出する画像ファイル容量 500MB/月まで。

「ドローン運用統合管理サービス」について

 全国のサービス拠点やクラウド基盤を活用し、ドローンの操縦や撮影代行、撮影した画像の加工と分析、パブリッククラウドも活用したハイブリッドクラウド環境でのデータの保管・管理、さらには業務システムとのデータ連携を支援するサービス。2017年11月にはドローンで撮影した2次元画像(写真)から構造物全体の3次元モデルをクラウド上で生成し、構造物の損傷箇所が全体のどこにあるかをひも付けて管理できる機能を強化した。これにより、構造物管理時の紙図面から3次元モデルへの移行や、構造物点検時の目視から写真利用への移行などを実現し、点検・管理業務の効率向上やサービス品質の向上に貢献する。

▼ドローン運用統合管理サービス
https://www.hitachi-systems.com/solution/s0308/robo-d/index.html