2020年6月11日、関西電力は、水力発電所導水路の内部を安全、効率的かつ経済的に点検できる水面ドローン(※1)を開発したことを発表した。

 水力発電所の導水路は、大規模損傷につながるさまざまな劣化を把握するために、定期的に発電を停止し、導水路内の水を抜いた上で、点検員が数kmに及ぶ導水路を歩きながら目視で点検作業を行っている。
 一方で、この点検方法では発電停止による電力量の減少が大きい点や、点検員の負担が大きいことに加えて、導水路のトンネル箇所は暗所であることから錆や損傷個所を確認しにくいなどの課題があった。

現行の点検方法

 そこで、関西電力は、これらの課題を解消するために、導水路の点検に用いることができる浮体式の水面ドローンを開発した。水面ドローンには同社が開発した、推進速度を抑えつつ導水路の壁面近くを安定的に走行する技術(※2)を導入しており、発電を継続した状態でも導水路内部を鮮明な映像で確認できるようになった。また、搭載カメラで撮影した点検映像を解析し点検距離を算出する技術(※2)によって、錆や損傷個所の正確な位置を把握できる。
 これにより、発電所を停止することなく、また点検員の入抗が不要になるため、安全でかつ負担も少ない点検が可能となった。

<水面ドローンを活用した点検方法>
・導水路を通水したまま水面ドローン浮かせ、壁面近くを安定して走行させる。
・水面ドローンに搭載したカメラ(気中カメラ2台と水中カメラ3台)で、導水路内部の壁を撮影する。
・ 撮影した映像を基に、点検員が導水路内部の錆や損傷の状態を確認する。

 水面ドローンは、同社水力発電所 約90カ所での活用により、点検にかかる日数を約90日短縮することを見込んでいる。これにより、発電停止による電力量の減少抑制や点検コストの削減にて、40%以上の収益改善効果があると考えられる。

<水面ドローン活用のメリット>
・水面ドローンを活用し、次にある表のように点検サイクルを見直すことで、発電停止の期間が現状の半分となり、発電停止による電力量の減少抑制に寄与できる。
・点検員の負担が軽減でき点検日数も削減されるため、安全性や効率性の向上が図れる。
・導水路壁面近くの映像を撮影できるため、錆や損傷を確認しやすい。

 水面ドローンを活用した導水路の内部点検業務については、関西電力での活用に留まらず、環境総合テクノスと連携し、他電力や自治体などの社外から受託することも視野に入れ、今後の活用について検討を進めていく、としている。

※1 今回開発を行った水力発電所の無圧導水路を対象とする浮体式点検装置の機体。
※2 特許出願中(特願 2020-004287、商標出願=商願 2020-24120)