2020年1月29日、フジタは 山口大学と共同で、 造成地を対象とした独自のドローン測量手法「斜め往復撮影ドローン(RTK※1 搭載型)」を開発したことを発表した。

 同技術は、カメラ角度を斜めにして撮影することで、標定点と呼ばれる測量用の目印を設置せず、とくに精度を出しにくい高さ方向の測量精度を画期的に向上させるものである。 施工中の複数の造成現場(千葉県野田市、茨城県つくばみらい市など)において実証試験を行った結果、高さ精度(誤差)23mmという国土交通省が推進するi-Constructionの要求精度を満たす高精度を達成し、有用性を確認した。標定点を完全になくすことで測量にかかる時間を大幅に削減し、作業時間を最大4分の1に短縮できることから、省力化と生産性の向上につながる技術である。

※1 RTK:高精度GNSS測位(Real Time Kinematic、RTK-GNSS測位)

図1 斜め往復撮影ドローン概要図

開発の背景

 通常ドローン測量をする場合は、トータルステーションによる従来通りの測量で標定点の座標を求め、計測対象範囲内に100m以下の間隔で標定点を設置すると規定されている。これに対して、GNSS搭載標定点の使用による事前測量の省略や、RTK搭載ドローンを用いた標定点の削減などの効率化も可能であるが、設置・回収の手間を省くためには完全に標定点が不要なドローン測量手法が望まれていた。

 また、ドローンで撮影した画像から三次元モデルを生成するSfM解析において、従来の鉛直平行飛行で撮影した画像のみの処理では高さ方向に大きな誤差が生じる問題があり、標定点の設置なしでは、本来は平坦な地形をドーム状・ボウル状などに歪めて推定してしまう課題があった。

共同研究の概要

 山口大学大学院創成科学研究科の神野有生准教授の研究室(以下 神野研究室)では、ドローン測量のSfM解析で生じる誤差への対策として、撮影の向き・高度に多様性を持たせる斜め撮影の研究を行っている。今回の共同研究では、神野研究室においてカメラ角度、画像セットなどの撮影設定およびSfM解析の条件・パラメータ設定を5,000ケース以上の解析実験に基づいて造成地向けに精密に分析、調整し、フジタが造成現場で繰り返し検証を行った。その結果、標定点を完全に省略し、GSD※2 20mmに相当する高度のドローン測量で、国土交通省で示された出来形管理の基準値である測量精度±50mm以内という高精度を達成した。

 「斜め往復撮影ドローン」では、ドローンの飛行時にカメラ角度を斜め(10~30度)に設定し、複数方向から対象を撮影する。その後、画像サイズや抽出する特徴点数などの詳細検討に基づくSfM解析を行うことで、標定点を設置せず、鉛直方向の撮影を省略しても精度が確保できる。

 今後、急峻な地形など厳しい条件下で実証データを蓄積し、同技術のさらなる効率化・高精度化を進め、標定点の設置を原則とする国土交通省の基準要項の改定につなげていく方針であるという。

※2 GSD:地上画素寸法。 GSD20mmは、 国土交通省の数量算出基準で規定される高度に相当。

導入効果

・標定点の設置省略により、災害現場など人の立ち入りが困難な現場でも高精度な測量が可能
・簡易ドローン測量「デイリードローン®※3」と組み合わせて使用することで、事前準備から解析までの一連作業を簡略化し、作業時間を従来比4分の1に短縮して測量コストを削減

※3 デイリードローン:2018年2月20日に同社が発表した開発技術。「ドローン測量を切盛土工事の日々の出来高管理に適用~デイリードローンで測量・解析時間を1/3に短縮~」(フジタリリース)