東北電力は、効率的な現場情報の収集を目的にドローンを積極的に活用しており、先般の台風19号においても、立入が困難な個所(山間部や浸水、土砂崩れ等)については、徒歩やヘリコプターに加え、ドローンも活用し設備被害状況の把握に努めてきた。

 今回、ドローンのより先進的な活用の一環として、送電設備の保守点検業務の安全性向上や効率化を目的に、日本電気(以下、NEC)が本年開発した「ドローン用送電線自動追尾撮影ソフトウェア」(以下、同ソフト)を活用し、送電線をドローンで自動追尾点検する手法を試行導入することを、2019年10月28日発表した。

 同点検手法は、ドローン地上装置(同ソフトをインストールしたもの)に入力した飛行経路をもとにドローンが自律飛行し、送電線を自動で検知・撮影(動画)するものである。東北電力とNECが、福島県の南相馬市と浪江町の協力のもと実証実験(※1)を、本年7月~8月に同市町地内において実施し、点検方法の有効性を確認したため試行導入することとした。

 送電線点検については、作業員が送電線に乗り出して移動しながら送電線の異常(微小な雷撃痕や素線切れ(※2)等)の有無を目視点検しており、高所作業に関する十分な安全対策や点検個所の停電が必要となる等、多くの労力と時間を要している。

 また、同点検にドローンを活用する場合、風により揺れ等が生じる送電線と適切な距離を確保しながら飛行・撮影するため、同距離を測るセンサー等が必要となるが、搭載機器の重量により、長時間の運航は難しいとされてきた。

 これらの課題を踏まえながらNECが開発した同ソフトは、簡単な操作で、ドローンに搭載したカメラで送電線を自動検知(自動追尾)し、鮮明に撮影できるとともに、ドローンと送電線との適切な距離を確保しながら安定的に自律飛行させることが可能となる。

 さらに、同ソフトを活用したドローンは、送電線との離隔距離を測るセンサー等を必要とせず、搭載機器を軽量化できることから、長時間の運航も可能となる。

 従来と比較すると、点検個所の停電が不要となる上、高所作業をドローンで代替できるとともに、より少ない人数で点検が可能となり、作業の安全性向上や効率化が図られる。

 東北電力は、今回の試行導入の検証を含め、送電設備の保守点検業務に対するドローンの本格導入に向けた検討を進めるとともに、今後も様々な技術や知見を活用して安全性向上や効率化等を図りながら、電力の安定供給に取り組んでいく、としている。

※1 福島県の南相馬市と浪江町における実証実験で撮影した送電線の映像は、NECのホームページ(下記リンク先)を参照。
https://jpn.nec.com/press/201910/20191028_01.html
※2 送電線を構成している複数のより線の一部が、落雷などにより切れた状態。

「ドローン用 送電線自動追尾撮影ソフトウェア」の概要

1. 概要

・NECが開発した「ドローン用 送電線自動追尾撮影ソフトウェア」をDJI社製ドローンの標準構成品(タブレット)にインストールすることで、送電線の自動検知・自動追尾を可能としたもの。簡易な操作にて、高精細な送電線の映像を自動で連続撮影することができる。

・同ソフトウェアの特長は以下1、2のとおり。

1. ドローンに搭載したカメラ(ズーム機能付)で送電線を自動検知し、送電線と適切な距離を確保しながら飛行・カメラ制御を行うことで、点検対象を自動追尾し、高精細に撮影することが可能。

2. 送電線との離隔距離を測るセンサー等を必要とせず、搭載機器を軽量化できることから、長時間の飛行が可能。

・実証実験(2019年7月〜8月に、福島県の南相馬市ならびに浪江町地内で実施)では、同ソフトウェアを搭載したドローンを活用し、送電線を詳細撮影することで、送電線の状態を点検できることを確認した。

ドローンによる「送電線自動追尾点検」の実証実験の様子(2019年7月~8月に、福島県内で実施)
実証実験時にドローンが撮影した電線※(直径18.2mm)
実証実験時にドローンが撮影した電線※(直径38.4mm)

※上記撮影時の電線とドローンの離隔距離は、約15~20m。

2. 同ソフトウェア開発における役割分担

・東北電力:送電線点検業務の知見提供、ならびに実証実験環境(実設備)の提供
・NEC:「ドローン用送電線自動追尾撮影ソフトウェア」の開発、ならびに実証実験時における飛行操作、飛行方法や撮影方法の改善
・関係自治体(南相馬市、浪江町):実証実験を行った送電線が経過する地区の住民への事前周知

参考:従来の送電線点検の様子

・作業員が送電線に乗り出して、移動しながら異常の有無を目視点検。
・同点検にあたっては、高所作業に関する十分な安全対策や点検個所の停電が必要となる等、多くの労力と時間を要している。