2026年9月30日から10月2日まで東京ビッグサイトで開催された「危機管理産業展2026(RISCON TOKYO)」で、JDRONE及びWorldLink & Companyは開発中の国産消防用放水ドローンや、ガス検知機能を備えた屋内点検用ドローン、係留給電型の定点監視ドローンなどを展示した。消防車両が進入しにくい場所での放水や、消防隊員が立ち入る前の危険確認、火災現場の上空監視など、消防活動のさまざまな場面を想定した機体を紹介した。

 JDRONEは2026年5月、エクセディ傘下のWorldLink & Companyの完全子会社となった。グループ全体では、エクセディが機体開発やプロペラ等の部品開発を担い、WorldLink & Companyが展開するSkyLink Japanが機体販売・保守、さらにはJDRONEがドローンの運用サービスを主に担う体制となり、各社の技術や事業基盤を生かしたサービス展開を進めている。

高度30mから毎分400Lを放水、はしご車が進入できない場所での消火を想定

 今回展示された消防用放水ドローンは、自動車用駆動部品の開発・製造を手がけるエクセディが開発を進めている機体だ。総務省消防庁の「消防防災科学技術研究推進制度」に採択されたモリタホールディングスの研究開発にも、研究協力者として参画している。

写真:展示された消防用放水ドローン
エクセディが開発中の国産消防用放水ドローン。下部にノズルを装備し、地上から供給された水を火点に向けて噴射し消火する。

 機体は上下に2枚のプロペラを重ねた二重反転式のオクトコプターで、計8枚のプロペラを備える。全幅2,860mm、全長2,842mm、高さ839mm、機体重量はバッテリーを除いて44kg、最大離陸重量は125kgとなる。下部に消防用放水ホースを搭載し、上空から火点に対して消火活動を行う。開発段階の現状では、前方に取り付けられたカメラによって手動操縦で火点を狙って放水する運用を想定している。

写真:機体下部の消防用放水ホース
下部に搭載されたノズル。
写真:機体下部の可視カメラ
操縦・周辺確認用に取り付けられた可視カメラ。

 開発目標としているのは、高度30mから水平方向に12m以上の距離を取り、毎分400Lを放水する性能だ。高所からの放水により、道路が狭く大型のはしご車が進入できない市街地や、消防隊員が接近しにくい場所での消火活動を支援する。

 放水に使用する水は機体に搭載せず、地上の消防ポンプ車などからホースを通じて供給する。機体がホースを上空まで持ち上げ、ノズルから火点に向けて放水する仕組みだ。エクセディの開発担当者は「はしご車の上の部分をドローンに置き換えるイメージです」と説明する。

 都市部での建物火災に加え、林野火災なども想定し、消防現場で必要とされる放水高度や放水量を検討している。実際の放水距離や放水量は地上ポンプの吐出圧などによって変動するため、さまざまな条件で試験を進めているという。

重量約50kgのホースと放水反動力への対応が技術的な課題

 消防用放水ドローンの開発で課題となるのが、放水ホースの重量と、放水時に発生する反動力への対応だ。

 エクセディによると、開発機の最大ペイロードは設計上約50kg。高度30mまで水の入ったホースを引き上げると、その重量だけで約50kgに達するという。機体にはホースを持ち上げる揚力が必要となるほか、放水時にはノズルから噴射される水の反動を受けながら姿勢を維持しなければならない。

 機体の位置保持にはGNSSを利用した飛行制御を用いるが、放水時は通常のホバリングとは異なる外力が加わる。エクセディでは、放水反動力に対する機体の安定性について、設計段階での検討と飛行試験の両面から検証を進めている。

 2025年度にはモリタホールディングスと連携し、同社の圧縮空気泡消火システム「CAFS」を使用した放水試験を実施した。2026年度は、実際の火点に対する消火試験など、より消防現場での運用を意識した検証を計画しているという。

 飛行時間については、現段階ではバッテリー2本による運用を前提としており、最大高度でホースを持ち上げるなど負荷の大きい条件では、約10分を目安としている。一方、放水高度を下げるなどして機体への負荷を軽減できれば、飛行時間を延ばせる可能性がある。

写真:展示された機体のアームより下の部分
ドローンの中央にはバッテリー2個を搭載する。

 放水ノズルは交換式で、通常の放水に加えて泡消火にも対応する構想だ。消防現場での使用条件に応じて、放水方法を選択できるようにする。現時点では機体の操縦と火点に向けた放水方向の調整は手動で行う方式となっており、操縦者には一定の熟練度が求められる。消防関係者からは自律飛行やAIによる操縦支援を求める声も寄せられているが、まずは手動操縦による運用を確立し、その後の機能拡張を検討する方針だ。

フライトコントローラーなど基幹システムを国産化、消防隊員の意見を開発に反映

 エクセディは当初、ドローン用プロペラやモーターなどの部品開発を中心に事業を展開していたが、現在は機体そのものを開発・製造するメーカーへの転換を進めている。今回の消防用放水ドローンも、その取り組みのひとつとなる。

 開発に当たっては、官公庁などでの採用を見据え、フライトコントローラーをはじめ、送信機、通信システム、映像伝送などの基幹技術の国産化を進めている。部品のすべてを国産品とするわけではなく、一部には海外製部品も使用するが、機体の制御や情報通信に関わる主要システムは国内技術を活用する方針だ。

 この開発を支えるのが、2025年12月に北川鉄工所グループから譲り受けたAileLinXの技術資産だ。同社が開発した独自のフライトコントローラーや機体制御技術を継承し、エクセディによる国産ドローンの開発に活用している。また、消防用放水ドローンでは、実際に使用する消防隊員の意見を仕様に反映していることも特徴だ。モリタホールディングスとの研究開発では消防関係者と運用上の課題について協議しているほか、エクセディ独自でも消防機関へのヒアリングを行っている。その中の具体的な要望のひとつが、火点を確認するための赤外線カメラの機能だ。煙などによって可視カメラでは状況を確認しにくい場面でも、熱源を把握できるようにすることが求められている。開発機には可視カメラと赤外線カメラを搭載する計画で、消防現場での使いやすさを検討している。

 同社は今後、放水性能や飛行安定性の検証とともに、消防隊員自身が機体を操縦して使用することを想定した運用方法の検討を進め、試験的な配備や製品化につなげる考えだ。

4種類のガスを検知する「ASIO X」、閉鎖空間への立ち入り前に状況を確認

 運用サービスを提供するJDRONEでは、スイスのFlybotixが開発した屋内点検用ドローン「ASIO X」の取り扱いを開始した。全周にガードを備えた屋内点検用ドローンにガス検知器を標準搭載しており、下水道やプラント設備など、人が立ち入る前に内部の状況を確認する用途を想定している。

写真:展示された「ASIO X」
運用サービスの機材選択肢として、新たにガス検知ができるスイスのFlybotix社製ドローン「ASIO X」の取り扱いを開始。

 ASIO Xは、上下に2枚のプロペラを配置した同軸2ローター方式を採用する。全周をケージ状のガードで覆った構造で、壁面や設備に接触する可能性のある狭い空間での飛行に対応する。機体は幅40.6cm、長さ42.5cm、高さ30.5cm、重量約1.15kg。最大飛行時間は理想条件下で約20分となる。

 機体に搭載されたマルチガス検知器は、メタン、硫化水素、酸素、一酸化炭素の4種類を測定できる。可燃性ガスや有毒ガスの有無、酸素濃度を確認することで、作業員が進入する前に危険な環境を把握するための情報を取得する。

 例えば、下水道管路や地下設備では、酸素欠乏や硫化水素の発生などが作業員の安全上の問題となる。こうした場所に人が立ち入る前にドローンを飛行させ、内部の映像とガス濃度を取得することで、調査や点検の事前判断に役立てられる。

 JDRONEの担当者は、消防隊員が建物内部などへ進入する前の状況確認にも活用できる可能性があると説明する。ただし、ASIO Xは防爆認証を取得した機体ではないため、可燃性ガスが滞留するおそれのある空間への飛行には注意が必要だ。また、機体によるガス測定は事前調査を補助するものであり、法令に基づく作業前の測定に代わるものではない。このほか、4Kカメラや赤外線カメラ、最大4万ルーメンの照明、LiDARを備える。LiDARで周囲の壁面や設備との距離を測定できるほか、取得した映像などを解析することで、点検対象の三次元モデルを作成し、内部の形状や異常箇所の位置を把握できる。

写真:機体に搭載されたLiDAR
非常にコンパクトなLiDARを前面に搭載。その左右にはLEDを備える。

 GNSS(全球測位衛星システム)が利用できない屋内でも、カメラや各種センサーを組み合わせて機体の姿勢や位置を推定する仕組みだ。また、機体が転倒して上下逆になった場合に、姿勢を立て直すための復帰支援機能も備えている。

 ASIO Xの国内販売は、国内総代理店のFINDiと販売代理店のSkyLink Japanが連携して展開している。JDRONEでは、運用サービスとして屋内点検の依頼に応じた機体の活用を検討しており、将来的には導入時の操縦研修などでもグループ内で連携する考えだ。

係留給電型「HOVER EYE」で火災現場を上空から監視

 このほか、JDRONEでは国産の係留給電型ドローン「HOVER EYE」も展示された。

写真:展示された「HOVER EYE」
定点監視に適した国産の係留給電型ドローン「HOVER EYE」。

 HOVER EYEは、地上からケーブルを通じて電力を供給し、最大30m上空での定点監視を想定したドローンだ。バッテリーによる飛行時間の制約を受けにくく、同じ場所から継続して映像を取得できることが特徴となる。

 JDRONEでは、火災現場などへ機材を持ち込み、上空から状況を確認する用途を想定している。機体と関連機材をケースにまとめて運搬でき、現場で展開して使用する運用方法を検討している。例えば、建物の屋上などに機材を設置して上空へ機体を上げることで、地上からは見通しにくい場所の状況を確認する使い方が考えられる。ただし、設置場所や係留方法、周辺の安全確保などは現場ごとの検討が必要となる。

 AileLinXは、2018年にヒロボーと北川鉄工所が共同出資する形で子会社として設立され、HOVER EYEの開発を進めていた。その後、エクセディがAileLinXから事業資産を譲り受けたことで開発を引き継いだ機体だ。現在は開発段階にあり、今後は赤外線カメラや照明などを用途に応じて搭載できるよう、仕様の変更を検討しているという。

 JDRONEは従来、火山観測や災害対応、広域の計測調査など、マルチコプターからヘリ、固定翼まで機種に捉われないドローンの運用サービスを中心に事業を展開してきた。近年は一度に広い範囲を計測する用途で無人ヘリコプターの需要が増えており、マルチローター型ドローンと適切に使い分けながら対応しているという。

 同社によると、発注元によっては中国製ドローンを使用しないことが条件となる案件も増えており、国産機や海外の非中国製機体を含めて選択肢を広げている。今回の展示では、消防用放水ドローンによる消火活動、ASIO Xによる進入前の状況確認、HOVER EYEによる上空からの定点監視という、それぞれ異なる役割を持つ機体を紹介した。JDRONEは、エクセディグループの機体開発・販売・運用体制を生かし、災害対応や点検などの用途に応じたサービスの拡充を進めていく方針だ。

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