新産業創造研究機構(NIRO)は8月7日、神戸市立中央区文化センターで「ドローン ピッチ&トーク in HYOGO -ドローンサービスが拓く新たな未来-」を開催した。NIROが運営する「ドローン利活用プラットフォーム」の参画企業11社が登壇し、高圧洗浄や農業、測量、点検、物流、災害対応など、各分野で進むドローンの活用事例や技術を紹介した。
実証から事業化へ、兵庫県で広がるドローン活用
NIROは、阪神・淡路大震災からの産業復興を目指して設立され、兵庫県や神戸市を中心に中堅・中小企業の技術開発や事業化を支援している。「航空宇宙・空飛ぶクルマ&ドローン」を含む4分野を重点分野に位置付け、産学官との連携による新産業の創出に取り組んでいる。
ドローン分野では兵庫県と連携し、行政・公益分野での活用検証から民間分野を含む実証へと対象を広げてきた。過去5年間で51件の実証を支援しており、ドローンによるリモート観光、線路上空を飛行するドローンを使った鉄道保守点検、水空合体ドローンによる水中撮影など、さまざまな用途を検証している。実証から事業化につながった例もあり、そのひとつであるハチの巣駆除専用ドローンを活用したサービスはダスキンが法人向けに展開している。
こうした取り組みを実証にとどめず、ビジネスにつなげるために2024年に立ち上げられたのが「ドローン利活用プラットフォーム」だ。NIROが事務局を務め、ドローン事業者だけでなく、ユーザー企業、自治体、大学、商工会などが参加。情報発信や事業者とユーザーのマッチング、ドローンビジネスの事業化支援などを行っている。イベントでの説明によると、2026年7月末時点で228社・団体が参加しているという。
司会進行を務めたNIRO主席の箙 一之氏は、「ドローンがどのようなもので、具体的にどう活用されているのかは、まだ十分に知られていません。一方で、ドローンでできることは増えていますが、事業者の多くは規模が小さく、情報発信まで手が回らないのが実情です。プラットフォームではイベントや展示会で情報を発信したり、問い合わせの窓口としてマッチングを支援したりしています。活動は兵庫県が中心ですが、法人であれば無料で参加できます」と説明した。
今回のイベントでは、プラットフォームに参画する11社が登壇。各社の事業や技術に加え、ドローンを取り巻く制度や関連技術などについて紹介した。屋内会場では複数の実機デモも実施され、会場には100人近くが集まった。
登壇企業は以下の通り(*デモあり)。
- 【空撮・3D映像】株式会社スカイトーン *
- 【窓清掃・忌避剤散布】株式会社T&T
- 【屋内・狭隘部点検】株式会社旭テクノロジー(ATCL) *
- 【農業】株式会社農社
- 【測量(点群・3Dデータ作成)】株式会社GEOソリューションズ
- 【屋外点検】株式会社ミラテクドローン *
- 【ドローンサッカー】株式会社TKホールディングス *
- 【レベル3.5飛行】株式会社ロジクトロン
- 【重量物運搬】日本コンピューターネット株式会社
- 【災害対応】第一電子株式会社
- 【屋内・狭隘部点検】NOVAQエンジニアリング株式会社 *
高圧洗浄から鳥害対策まで、液体噴射ドローンの用途を拡大
T&Tは、DJI社製のドローンをベースにした高圧洗浄システムを開発している。地上のポンプからホースを介してドローンへ水を送り、高所の外壁や窓などを洗浄する仕組みだ。発表では最大50mの高さで作業できるとしており、高温水のほか、用途に応じて薬剤などを散布できるという。
ウルトラファインバブル発生機を組み合わせるほか、噴射方向を変えられるノズルなども開発している。ノズル先端は最大120度まで角度を変えることができ、下から上方向への噴射にも対応することで、人が直接作業しにくい場所への利用を想定する。
さらに同社は、この噴射技術を高所洗浄以外にも応用している。スタジアムの梁などに鳥を寄せ付けにくくする忌避剤を散布するサービスを展開しているほか、除草剤の散布などにも活用しているという。
ドローン直播やロボットを組み合わせ、水稲栽培を省力化
自社農場を活用して農業分野の研究開発やコンサルティングを行う農社は、ドローンを基軸とした水稲栽培の省力化に取り組んでいる。
同社が運営に携わる「高適応型スマート水稲直播研究会」では、苗を育てて田植えをする従来の方法ではなく、ドローンを使って水田へ種もみを直接播種する栽培方法を検証している。
播種だけでなく、センシングドローンによる水田の状態把握やIoTを使った圃場管理、自動操舵トラクタやロボットによる肥料・除草剤の散布なども組み合わせる。ラジコン式草刈り機の開発も進めており、ドローン単体ではなく複数のスマート農業技術を組み合わせることで、農作業全体の省力化を図る。今後は草刈り作業の受託や鳥獣害対策への展開も検討しているという。
係留式ドローンで都市部の高層建築物を点検
ミラテクドローンは、高層建築物の外壁点検などに向けた「ラインドローンシステム」を紹介した。
人口集中地区(DID)をはじめとした都市部では、飛行条件に応じて航空法上の許可・承認や安全確保措置が必要になる。ラインドローンシステムは、建物の屋上と地上を結ぶラインに沿ってドローンを飛行させることで、機体の飛行範囲を物理的に制限する仕組みだ。係留飛行に関する制度を活用することで、一定の条件を満たせばDID上空など一部の飛行に必要な許可・承認を不要にできる。
同社は、100mを超える高さの神戸市役所1号館でも同システムを使用した外壁調査を実施。南側の外壁を半日で調査したという。ドローンを飛行させにくい現場に対応するため、最大8mの高さから撮影できる高所撮影機材「たおれん棒」も開発している。強風時や電波環境などの条件によってドローンを使用しにくい場合には、こうした機材と組み合わせて点検を行う。
100g未満の飛行型と管径200mm対応の走行型、狭所点検機を開発
林業現場の架線作業に使用する産業用ドローン「ALICE」や、運搬・点検などに利用できる水上ドローン「ORCA-one」を開発するNOVAQエンジニアリングは、下水道管や工場・プラントなどの狭隘部を対象とした2種類の試作機を披露した。
飛行型の「OR-U100(仮称)」は、100g未満に抑えた超小型機だ。カメラやプロペラガードを装備でき、GNSSを利用できない屋内や暗きょなどでの飛行を想定している。同社によると、気流が乱れやすい閉鎖空間でも安定して飛行できるよう制御技術を開発しているという。
もう一つの「MOGローラー(仮称)」は、管内径200mmへの対応を想定した走行型の点検機だ。極細の光ファイバーケーブルによる有線通信を採用し、約40分の連続稼働が可能だという。下水道管など、飛行型ドローンでも進入が難しい狭い空間での利用を想定している。
災害対応やレベル3.5、ドローンスポーツまで多様な事例
会場では実機を使ったデモも複数行われた。TKホールディングスは球状のフレームに覆われた競技用ドローンを飛行させ、ドローンサッカーを実演。参加者からは競技方法などについて多くの質問が寄せられた。
このほか、GEOソリューションズは測量で取得した点群や3Dデータの活用について紹介した。ロジクトロンは、2023年12月に制度化された「レベル3.5飛行」について、具体的な事業への活用を交えながら説明した。
日本コンピューターネットは、重量物運搬用ドローンについて、物資輸送だけでなく捜索・救助、監視、獣害対策などへの応用例を紹介。第一電子は兵庫県と実施する災害訓練を通じ、災害発生時にドローンをどのように活用できるか検証している取り組みを紹介した。
イベントの最後には、関西で今後開催されるドローン関連イベントも案内された。9月3、4日に神戸国際展示場で開催される「国際フロンティア産業メッセ2026」ではドローン関連の展示が行われ、NIROと関西経済連合会が共同で運営する「関西航空機産業プラットフォームNEXT」とともに、空飛ぶクルマを含む航空分野の情報発信を行う予定だ。また、10月24日には大阪府の大東市立市民体育館でドローンスポーツの総合イベント「Drone Games 2026」、2027年3月にはドローンサッカーU-15神戸大会の開催が予定されている。
