2025年9月10日から12日まで、東京都の東京ビッグサイトで開催された「国際物流総合展2025 第4回INNOVATION EXPO」において、地方自治体、物流会社、ドローン関連企業で構成される「全国新スマート物流推進協議会」が出展した。
「新スマート物流」とは、ラストワンマイル配送に重点を置き、自動化技術や共同配送の仕組みを導入するとともに、陸送と空輸を組み合わせて地域物流インフラを再構築する取り組みを指す。
自治体×企業で次世代物流網へ
同協議会は2022年5月に発足。人口減少や高齢化に伴う物流課題を抱える地方自治体と、物流分野や新技術に強みを持つ民間企業が協同し、「新スマート物流」を通じて持続可能で豊かな地域社会の実現を目指している。現在は市町村を中心とした地方自治体および物流関連企業、約40団体が参加。ドローン物流をはじめとする実証実験や研究、議論を全国各地で進めている。
AirTruckと実証成果を公開
国際物流総合展では、協議会が取り組みを行った山梨県小菅村や大分県宇佐市での実証実験の成果をパネル展示で紹介。さらに、実験で使用されたACSL製の物流用ドローン「AirTruck」の機体展示も行われ、来場者の関心を集めた。
AirTruckは、最大5kgの荷物を搭載可能な物流専用ドローンであり、エアロネクストが開発した重心制御技術「4D GRAVITY」を採用することで、飛行中にドローンが傾いても搭載した荷物は常に水平に保つことが可能。また、5kgの荷物搭載時の最大飛行時間は約35分となる。
小菅村・宇佐市での実装実験の取り組み
2021年4月から、小菅村では閉店となっていた旧商店を改修し、物流倉庫兼ドローンデポを設置。日用品を同施設に集積し、隣接する丹波山村のドローン発着場へ配送する仕組みを構築している。
2025年1月から3月にかけて実施された大分県宇佐市での実証実験では、AirTruckに荷物を搭載し、2023年に創設された「レベル3.5」飛行によって、宇佐市から深見地区の個人宅まで約5.8kmを飛行して荷物を届けた。陸上輸送の共同配送とドローン輸送を組み合わせた新たな物流モデルを検証した。
遠隔運航と操縦者育成が進展
展示パネルでは、ドローン運航の現状についても紹介された。具体的には、エアロネクストの子会社であるネクストデリバリーが小菅村を拠点に全国各地のドローン運航を遠隔管理していることや、補助者を含む遠隔操縦者の育成プログラムを提供していることが示された。
エアロネクストの担当者は、「さまざまな規制緩和が進んだ結果、先行地域ではドローン物流がビジネスとして成立する見通しが立ちつつある」と話す。規制緩和や制度整備が進む中で、実証実験から事業化への移行が現実味を帯びており、地方物流の課題解決に向けた次世代モデルとして期待が高まっている。
