モビリティの未来像を示す展示会「ジャパンモビリティショー2025」が、2025年10月30日から11月9日にかけて東京ビッグサイトで開催された。同展示会は自動車だけでなく、空・陸のあらゆる移動手段が集結し、次世代モビリティの姿を来場者に提示する場として進化を続けている。KDDIは、災害対応や地域課題の解決に向けたテクノロジーを示し、「空と陸をまたぐ新たなモビリティ構想」を提案した。
能登半島地震から始まった“災害対応の進化”
2024年1月に発生した能登半島地震以降、被災地域ではドローン活用の復興支援が進んでいる。KDDIは同年12月、能登半島のローソン七尾小島町店にドローンポートを設置し、自律飛行が可能なドローン「Skydio X10」を用いた行方不明者捜索の実証を実施。災害時の即応性を高める取り組みとして注目を集めた。
今回のモビリティショーでは、その取り組みをさらに発展させた“空と陸の連携”という未来像が示された。ブースにはSkydio X10のほか専用ドローンポート、そしてティアフォーが開発した自動運転車両が並び、コンビニを「モビリティハブ」として機能させる構想が紹介された。
地方には広い駐車場を持つ店舗が多く、その特性を生かしてドローンと自動運転車両の拠点として活用することで、新たな移動・物流サービスを生み出そうというものだ。
空と陸をつなぐ“統合運行管理”という次の壁
KDDIは現在、ドローンの自動航行と遠隔管理、自動運転車両の遠隔監視を個別に進めているが、それぞれのシステムはまだつながっていない。互いの運行状況を参照できないため、連携したサービス開発には課題が残る。そこで同社は、NICTが開発したプラットフォームをもとに空と陸を一元管理できるシステムの構築を検討しており、複合的なユースケースに耐えうる基盤づくりを進めている。
自動運転車両を“移動式ドローンポート”として使う構想も魅力的だ。車両が自動走行で山間部の鉄塔付近まで向かい、そこからドローンが離陸して点検を行う。作業後は車両へ戻り、自動運転で基地に帰還する。そんな人手を介さない一連の運用が想定されている。昨年度には、ロボットが救援物資を車両まで運び、ドローンが山頂へ届けるデモも行われ、実現に向けた技術的な課題なども見えてきた。
一方で、「キラーユースケースがまだ見えていません」と担当者は率直に語る。技術はあっても、社会的な需要がなければサービスとして成立しない。コンビニは、生活インフラであったが、公共料金収納やATMといった機能が加わるにつれ、社会インフラへと役割を広げてきた。ドローンと自動運転を組み合わせた新たなモビリティサービスにも“必要とされる理由”が求められる。
とはいえ、ローソンとの協業が既に進み始めている点は大きな前進だ。まずはドローンポートの運用を確立し、その後は自動運転車両との接続、統合システムの実装と段階的に広げていく方針だ。「空と陸が同じシステム上で動き、同じ拠点からスタートできれば、より高度なサービスが可能になる」。KDDIが描く未来図は、災害対応からインフラ点検、地域物流まで、多様な社会課題の解決へとつながる可能性を秘めている。
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