国内最大級のドローンスクールネットワークを有するJUIDA(日本UAS産業振興協議会)。全国189校の認定スクールが日々、産業現場におけるドローン人材の育成に取り組んでいる。そのJUIDA認定スクールが一堂に会し、1年の活動を総括する「JUIDA認定スクールフェスタ2025」が、10月17日、東京大学で開催された。
10周年を迎えたJUIDA、災害対応や防災連携も加速
スクールフェスタは鈴木真二理事長の挨拶で幕を開けた。鈴木氏は「暑い夏の中、屋外活動が多い皆様は大変だったと思います」と労いの言葉をかけ、2015年の活動開始から10周年を迎えたJUIDAの歩みを振り返った。
近年は災害対応や事故現場でドローンを活用するケースが増加しており、2024年の能登半島地震や2025年の埼玉県八潮市道路陥没事故では、JUIDAが指揮・調整を担い大きな役割を果たした。また、自衛隊との災害時応援協定も進めており、2025年4月に陸上自衛隊東北方面隊、6月には東部方面隊と締結。鈴木理事長は「能登半島地震でドローン活用の重要性が再認識された。自治体との協定締結を通じて災害対応力を高めています」と述べた。
来賓には経済産業省 航空機武器産業課 次世代空モビリティ政策室の古市茂室長と、国土交通省 無人航空機安全課の江口真課長が出席。古市氏は「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)を通じて国産機開発を支援しています」と述べ、ACSLの小型ドローン「SOTEN(蒼天)」次期モデル開発に約26億円、イームズロボティクスの高ペイロード機開発に約30億円を支援していると紹介した。また経済安全保障の観点から、ハイブリッドVTOL機や“一対多運航”技術の開発・性能評価にも取り組んでいるとした。
一方、江口課長は国家資格制度の現状について報告した。飛行許可・承認申請や機体登録数が増加し、操縦者技能証明の取得者も順調に伸びているという。2025年時点で一等資格3,686件、二等資格3万18件を発行。一方で、登録講習機関で実地修了審査を実施していない受講者に修了証明書を発行していることや、必要な許可・承認を得ずに飛行するなど不適正な事例も確認されており、「講習品質の維持と適正運営を徹底してほしい」と呼びかけた。なお、国家資格の制度開始から3年を迎え、登録更新者が出始めることにも触れ、早期の更新申請を促した。
教育から実装へ ― 新しい人材育成モデル
来賓挨拶に続き、JUIDAの熊田知之事務局長が登壇。10年間のスクール制度による教育活動を総括し、「今後はドローンを“教える”だけでなく、“使って働ける人材”を育てる段階へ移行する」と述べた。
その取り組みの一環として、東急コミュニティーおよび「ドローンスクール東京」を展開するハミングバードと連携し、「ドローン点検スペシャリスト育成コース」を開設。建物やインフラ点検を担う実務人材の育成と、点検需要の拡大を両輪で推進する。さらにテストフィールド提供や研究論文公開など、技術支援・知見共有も強化しており、論文をまとめたオンラインの無料PDF「テクニカルジャーナル」には査読済み論文58件が掲載、月間約1,100アクセスを記録。米国や中国からの閲覧も多く、国際的評価が高まっているという。
JUIDAは国際標準化(ISO)活動にも積極的で、2024年から無人航空機国際標準化国内委員会の事務局を担当している。教育機関運営やトレーニング標準の策定に加え、目視外飛行の国際標準化も手掛ける。2025年には東京で総会を開催し、主催も務めた。熊田知之事務局長は「日本がリーダーシップを発揮しながら、標準化を進めています」と胸を張った。
スクールアワーズ表彰と現場の挑戦
イベント後半では「JUIDAスクールアワーズ2025」の表彰式が行われた。理事長賞には8校がノミネートされ、最優秀に輝いたのはDアカデミー関東本部。代表の依田健一氏が登壇し、鈴木理事長からトロフィーを受け取った。
同校の取り組みは「国家資格固定翼取得講習について」。登録講習機関の大半がマルチコプター機を用いる中、Dアカデミーは飛行機型(固定翼)の国家資格講習を実現した国内初のスクールだ。依田氏は小学生時代からラジコン飛行機に親しみ、2025年には飛行機型の一等資格を取得した。現時点において、全国でも3名程度しかいない稀少な資格保有者である。
レベル3.5飛行(機体に搭載したカメラで歩行者等の有無を確認して行う無人地帯での目視外飛行)では、二等以上の国家資格を持つ操縦者が必須。VTOLなど長距離機体を運用するには飛行機資格が必要であることから、依田氏は「これがネックになっている」と指摘。依田氏は、千葉県君津市にある東京ドーム3個分の練習場を活用し、実機練習とシミュレーターを併用するカリキュラムを構築した。試験は日本海事協会の担当者が出張して実施する形式で、同校での練習をもとに受験者が慣れた環境で挑める点も特長だ。依田氏は「国交省と議論を重ねて環境整備を行いました。ファーストペンギンとして取り組んでいます」と語った。
特別賞にはアスキムドローンスクール、ドローンテクノポート神戸、HIROSHIMAドローンファーム仙養校の3校が選ばれた。アスキムドローンスクールは測量・点検分野の実務者教育が高く評価され、ドローンテクノポート神戸は大阪・関西万博で子ども向け操作体験を提供し、産業認知に貢献。HIROSHIMAドローンファーム仙養校は地方自治体と連携した防災活動が評価された。
開校10周年表彰にはつくばドローンスクール、デジタルハリウッドロボティクスアカデミーなど4校、1周年表彰には全国12校が選ばれた。
現場連携と社会実装 ― 災害・万博での運用報告
八潮市道路陥没事故では、Liberawareとブルーイノベーションがドローンによる調査で重要な成果を上げ、JUIDAから感謝状が贈呈された。Liberawareの閔弘圭代表は「JUIDAの支援により迅速な連携体制を構築できたことが実績に繋がりました」と感謝を述べ、ブルーイノベーションの熊田貴之社長は「公共インフラ調査でドローンは注目されてきませんでしたが、これを機にJUIDAとの連携をさらに強化していきます」と語った。
現地調査を担当したJUIDAの從二光平氏は、「事故現場では、ドローンは期待されていませんでしたが、2社が協力して取り組んだことで成果を上げられました。限られた時間で何を撮るか徹底的に共有したことが成功要因だと感じています」と分析した。
また、大阪・関西万博ではドローンと空飛ぶクルマの同時運航管理にもJUIDAが関与。久保大輔理事は「多くの調整事項をガイドライン化し、NEDO開発の運航管理アプリで一元化しました」と説明。熊田貴之氏は運航責任者として「リモートID情報を活用し、実運用可能な管理モデルを構築できました」と手応えを語った。
ドローン関連省庁による現状の解説、意欲的なスクールによる先進的な取り組み、業界最先端の事業者による活動の報告など、2025年も多くの情報が更新される内容となったJUIDA認定スクールフェスタ。国家資格制度が始まってまもなく3年。資格としての人気や注目度は年を追うごとに高まっている。ドローンに興味関心を持つ人々の入口になるのはスクールだ。JUIDA認定スクールのドローン普及と安全意識を持った人材育成に今後も期待したい。
