中国製の農薬散布用ドローンを手掛けるXAG JAPANは、9月から販売を開始した新型農薬散布機「XAG V40」と「XAG P40」を展示。それに加え、精密農業のセンシング作業を目的としたドローン「XAG M500」や、農薬散布機「XAG P100」、ローバー型の「XAG R150 2022」を参考出展した。

独自のフライト制御システムを搭載、自律精密散布を実現したV40とP40

XAG JAPANが展示したV40(右)とP40(左)。V40の寸法は2811(L)×830(W)×700(H)mm(アーム展開時)。P40の寸法は2120(L)×2110(W)×550(H)mm(アーム展開時)。両機とも精密な自動散布を実現するフライトシステムを搭載している。

 V40とP40は、スマートAIエンジンを基盤としたアルゴリズム、高性能なパワートレイン、柔軟なタスクミッションシステムを組み合わせたフライト制御システム「SuperX4インテリジェント制御システム」を搭載しており、バッテリーや農薬の残量に応じて自動で最適なルート生成を行う。また、高精度測位が可能なGNSS RTK方式を採用したことで、センチメートルレベルの測位に基づいた精度の高い飛行が可能となった。これに加え、前方40m先の障害物を検出するフロントダイナミックレーダーと下方向の障害物を検出する地形モジュールを搭載しており、飛行の安全性を向上している。両機ともIP67レベルの防水・防塵性能を備え、水洗いが可能だ。

 V40は、2つのローターを備えたチルト式ツインローターの構造を採用したバイコプターであり、ドローンのなかでも数少ない設計構造だ。2つのプロペラが安定した下降気流を生み出し、強力なダウンウォッシュで従来機より作物への塗布浸透性が大幅に向上するという。さらには、アームとプロペラを畳んだ時の寸法は展開時の約1/3となり、可搬性に優れる点もバイコプターのメリットといえる。なお、タンク容量は液剤が16L、粒剤が25L、散布幅は5~10m、最大流量は10L/分となる。

 P40は同社の農薬散布用シリーズのフラッグシップモデルであり、「最新テクノロジーを使用するスマートソリューションを提供する」をコンセプトに開発されたドローンだ。デュアルノズルと次世代大容量ポンプを採用することで、最大毎分10Lの散布を可能にした。また、精密な吐出量制御を行い、ムラのない均一な散布を実現する。タンク容量は液剤が20L、粒剤が25L、液剤散布は1時間当たり15Lとしている。

 遠心分離粒剤散布装置である「RevoCast」は、スクリューフィーダーの設計で散布量を可変制御し、種子を傷つけず全体へ均一に散布を行う。1時間当たり2.4tの肥料や1.6tの水稲種子を散布可能だ。

 両機ともプロポによる操縦が不要であり、専用アプリケーションを使った自律飛行によって均一な散布が誰でも手軽に行える。

センシング用ドローン「M500」や散布用ドローン「P100」、無人車「R150 2022」を参考出展

 昨年末にXAG本社で発表された新世代ドローンのM500、P100、さらにはローバー型のR150 2022も参考出展という形で展示されていた。

リモートセンシングドローンM500。寸法は682(L)×682(W)×177(H)mm(アーム展開時)。飛行時間は25分。下方向レーダー、障害物回避レーダーを搭載。
可視光とNDVIのデータを取得するセンシング用カメラ「XCam 20Mマルチスペクトルジンバルカメラ」が付属。

 効率的な農薬散布には、作物の育成状況などを分析した精密な圃場マップの生成が必要だ。担当者は「近年は手軽に精密な圃場マッピングを行いたいとの要望が増えている」と話し、その要望に応える形で登場したのがリモートセンシングドローンM500だ。

 展示されていたM500には、「XCam 20Mマルチスペクトルジンバルカメラ」が搭載されており、NDVIによって作物の育成状況を取得できる。本国では、メガピクセルと波長帯の異なる4種類のジンバルカメラをサポートすると発表しており、今後オプションとして登場する可能性もある。操縦は専用アプリにより、自動飛行・手動飛行を切り替えることが可能だ。

40Lタンク容量の大型散布ドローンP100。
P100用の粒剤散布装置。ワンタッチで交換可能。

 散布用ドローンのP100は、寸法が2487(L)×2460(W)×685(H)mm(プロペラ展開時)、液剤で40L、粒剤で60Lのタンクを備えた大型機だ。飛行プラットフォームとタスクシステム(散布装置)をワンタッチで完全に分離できるため、液剤から粒剤への切り替えやメンテナンス、持ち運びが容易に行える。散布性能に関しては、散布幅5~10m、最大散布流量は12L/分で、インテリジェントな回転噴霧技術を採用した「RevoSpray 2.0」で、60~400μmサイズの微細な液滴を正確に噴霧し、農薬の使用を大幅に削減することができるという。

無人車R150 2022。スケーラブルなオープンペイロードプラットフォームとなり、アタッチメントを取り付けて使用する形となった。また操縦は両手で操作するコントローラーに変更された。
液剤散布システムを装着したR150 2022。

 従来機は液剤散布仕様が基本ベースであった無人車R150だが、新型のR150 2022ではスケーラブルなオープンペイロードプラットフォームとなった。散布、施肥、草刈りなど、さまざまなアタッチメントを取り付けて利用することになる。自律運転システムには「SuperX4 Proコントロールシステム」を搭載したことにより、長時間完全に自律的に運転することが可能だ。
 日本での発売は、M500は年内発売予定、P100とR150 2022は未定となっている。

#第12回 農業Week 記事