国内ドローンビジネス市場の動向を調査した結果をインプレスがまとめた新産業調査レポート『ドローンビジネス調査報告書2026』は、本年度から新たに利用企業へのアンケートによる動向調査などを掲載した。今回は本書から、ドローンビジネスの市場概況を紹介する。
2025年度の市場規模は13.8%増の4973億円、うちサービス市場が規模も伸びも大きい
日本のドローンビジネス市場は、「実証実験」や「限定的な運用」を繰り返すフェーズを終え、産業インフラの一部として本格的な社会実装と商用化の拡大期に入っている。
2025年度のドローンビジネス市場規模は4973億円と推計され、前年度の4371億円から13.8%増加している。2026年度には5501億円(前年度比10.6%増)、2030年度には9544億円に達し、2025年度から2030年度にかけての年間平均成長率(CAGR)は13.9%と、引き続き高い成長率が続くと予測される。
分野別では、サービス市場が前年度比18.1%増の2711億円で最大となり、機体市場は同8.2%増の1227億円、周辺サービス市場は同10.0%増の1036億円となっている。2030年度にかけてのCAGRは、機体市場が14.6%、周辺サービスが同14.1%と、いずれも二桁成長が続く見通しである。
「点検」「土木・建築」での活用が大きく伸長
現在、ドローンの活用が伸びている分野として、インフラ点検や土木・建築分野が挙げられる。
2025年度の点検分野の市場規模は983億円でサービス市場の中で最も大きく、2030年度には約1.6倍の1614億円に達する見込みである。また、土木・建築分野は2025年度の427億円から2030年度には約2.8倍の1209億円に達して、点検に次ぐ市場になる見込みだ。
本書のアンケートにおいても、ドローンの利用率が高い業種は「電気・ガス・熱供給・水道業(43.8%)」「通信業(29.2%)」「建設業(28.6%)」など、インフラや現場産業で顕著である。
導入の進捗段階については、利用実績のある企業の約半数(48.9%)がすでに「実運用」のフェーズに達しており、特に建設業(67.6%)や電気・ガス・熱供給・水道業(66.7%)では日常的な業務として定着している。
具体的なユースケースのアンケート結果の上位も「土木・建設(現場状況把握)」(24.6%)、「点検(設備外観)」(20.4%)、「土木・建設(測量)」(18.0%)が占めている。
土木・建築分野での活用が伸びている背景に、工事進捗確認を無人・定時で実施できるドローンポートの普及がある。DJIやSkydioといった主要メーカーが、小型化や対応機体の拡大など、ドローンポートの機能拡充に注力している。充電・格納・離着陸を自動化できることから、インフラ施設の点検、夜間巡回警備などでの活用も広がっている。これに伴い、ビジネスモデルも機体単体の販売から、ドローンポートや通信網・解析AIを含むソリューション型へのシフトが進むと予想される。
今後は「運搬」用途に大きな期待
今後期待されているのが運搬・搬送分野である。特に、最大80kgの積載能力を持つ「FlyCart 100」の発売で、「軽いものしか運べない」というドローンに対する認識が改められた。深刻化する人手不足を解消する手段の1つとして現場への導入が加速しており、林業の苗木運搬、山間部における送電鉄塔の保守作業、土木・建築現場の資機材荷揚げなどで利用が広がっている。反復輸送により1日に1〜3tの物資を運ぶような現場も増えている。前述のユースケースのアンケート結果においても、「運搬(小口荷物)」は15.6%で5番目に高く、「運搬(重量物)」も11.1%で続いている。
連動して市場規模も大きく拡大し、運搬用途を含む「その他」の市場規模は2030年度には967億円まで拡大すると予測している。
https://www.dji.com/jp/media-center/announcements/dji-release-dji-flycart-100)
物流での活用には時間を要する見込み
一方、本格的な普及までに時間を要しているのが「物流分野」といえる。深刻なドライバー不足や過疎地の課題解決として期待される「物流」分野だが、本格的な商用化には大きな壁が存在している。全国各地で実証実験や「レベル3.5飛行」による取り組みが広がっているものの、離島への医薬品など高付加価値品の配送などに留まっている。2030年度における市場規模も100億円に満たないと見られる。
社会実装への最大の障壁は有人地帯での目視外飛行の環境整備と事業採算性にある。2022年に有人地帯での目視外飛行が解禁されたものの、求められる機体認証のハードルが非常に高く、2025年度に至っても実施例はごくわずかに限られている。また、ドローン機体をはじめ機材の減価償却やモバイル通信、保険などを含めると運用コストが高いため、1回数百円の配送料金だけで採算を取ることが極めて困難であり、多くの取り組みが国や自治体の補助金を活用して進められているケースが多い。
物流分野が本格的な事業化を果たすには、操縦者1人で複数の機体を運航する「多数機同時運航」による人件費削減や、平常時には物流を行い非常時には同じドローンを災害支援へ転用する「フェーズフリー」、離島や中山間地を抱える自治体と民間が連携する「準公共化」といった新たな事業モデルの構築が求められる。
今後の展望
国内のドローンビジネスは、実証実験のフェーズから、事業継続や安全確保に不可欠な資産として業務に組み込まれる「実装・実運用」のフェーズへと移行しつつある。ドローンの導入が進む分野では、単なる人の作業の代替に留まらず、取得したデータをAIで解析するシステムへの投資など、データ活用による自動化・省人化へと活用の焦点がシフトしている。
今後は、組織的な運用ルールの整備や全社的なデータ活用基盤の構築が進み、投資対効果(ROI)が明確化されることで、ドローンビジネス市場はさらに拡大していくことだろう。
| 書名 | ドローンビジネス調査報告書2026[『実証』から『社会実装』への転換──産業基盤強化と2030年への戦略] |
| 著 | 春原 久徳、青山 祐介、伊藤 英、インプレス総合研究所 |
| 監修 | ドローンジャーナル編集部 |
| 発行所 | 株式会社インプレス |
| 発売日 | 2026年3月27日(金) |
| 価格 | CD(PDF)版・電子版 14万3,000円(本体13万円+税10%) CD(PDF)+冊子版 15万4,000円(本体14万円+税10%) |
| 判型 | A4判 |
| ページ数 | 562ページ |
| ISBN | 978-4-295-02419-4 |
| URL | https://research.impress.co.jp/report/list/drone/502419 |
