2026年5月29日、KDDIスマートドローンは、三重県が南海トラフ地震などの大規模災害発生時に想定される孤立地域へ迅速に物資を届ける体制を構築するため、「ドローンを活用した災害時物資輸送ガイドライン」の策定業務を受託したと発表した。
このガイドラインは、能登半島地震で顕在化した孤立地域への物資輸送や初動対応の課題を教訓としている。三重県内の各市町が民間事業者や地域住民と連携し、発災時にドローンを用いた物資輸送を円滑かつ安全に実施できるよう、事前準備から運用体制、関係者の役割分担、飛行時の確認事項まで、実務の手順を体系的に整理したものとなる。
南海トラフ地震の発生が懸念される中、三重県内でも道路の寸断や土砂災害等による孤立地域の発生が想定されている。食料や医薬品、衛生用品などの緊急物資を迅速に届ける手段としてドローンの有効性が示される一方、実際の運用には飛行ルートの確認、離着陸場所の確保、関係者間の役割分担など、平時から整理しておくべき事項が多いことも近年の災害で明らかになった。そのため、発災時にドローンを円滑に活用できるよう実務に即したガイドラインの整備が求められていた。
ガイドラインの概要
このガイドラインは、三重県内の各市町が発災時にドローンを活用した物資輸送を円滑かつ安全に運用できるよう、平時からの準備事項と発災時の対応手順を整理したものである。事前の運用体制づくり、離着陸地点・飛行ルートの選定、法制度への対応、関係者との事前調整に加え、発災時の体制再編、輸送ルートの確認、物資の積載・輸送、飛行後の記録まで、一連の実務の手順を示している。また、災害種別に応じた対応や特例措置の活用、現場で使えるチェックシート等も盛り込んでいる。
【ガイドラインの骨子】
1. 運用体制の構築
各市町、民間事業者、地域住民の役割分担を明確化し、発災時に連携してドローン物資輸送を実施するための体制構築手順を整理。
- 各市町:現場調整、関係機関との連携、運用判断
- 民間事業者:ドローン運航、技術的知見の提供、安全管理支援
- 地域住民:現地情報の提供、離着陸地点周辺での協力
2. 発災前の準備
発災時に迅速に運用を開始できるよう、平時から整理・確認しておくべき事項を明確化。
- 物資輸送に適した機体の選定
- 離着陸地点および飛行ルートの選定
- 航空法等の法制度への対応
- 運航可否判断基準の設定
- 地域住民や関係者との事前調整
- 飛行訓練の実施
- 事故・重大インシデント発生時の対応
3. 発災時の対応
災害発生後、現場で迷わず物資輸送を実施できるよう、準備から飛行後の記録までの手順を整理。
- 災害状況に応じた運用体制の再編
- 機体・バッテリー・通信環境等の確認
- 輸送ルートの確認・策定
- 飛行許可・関係機関との調整
- 物資の積載、離陸、輸送、荷降ろし
- 復路飛行、着陸後の確認
- 飛行日誌・点検記録等の作成
4. 災害種別・特例措置への対応
災害の性質や緊急度に応じて、適切にドローンを活用するための考え方を整理。
- 台風・大雨などの進行型災害への対応
- 地震などの突発型災害への対応
- 捜索・救助等のための特例措置に基づく運用
- 安全確保と迅速な対応を両立するための留意点
5. 現場活用ツール
各市町の担当者が実務で活用できる様式・チェックシートを整備。
- 飛行日誌様式
- 点検記録様式
実証概要
ガイドラインの策定にあたり、発災時に孤立リスクがあるいなべ市と南伊勢町において、災害時を想定したドローンによる物資輸送の実証調査を行った。いなべ市と南伊勢町において実運用が可能な飛行ルートを設定し、実際の運航を想定した物資輸送を地元の事業者(NRT)と共同で実施した。
| 実証市町 | いなべ市 | 南伊勢町 |
| 実証時期 | 2025年11月17~19日 | 2025年11月19~21日 2026年1月29、30日 |
| 実証内容 | 燃料輸送を想定し、最大15kgの携行缶を輸送。高圧電線などの障害物がある環境下での安全なルート設定基準を確認。 | 食料品輸送を想定し、ペットボトル飲料を輸送。ウインチシステムを用いた物資の積載・荷降ろし手順を確認。 |
| 飛行ルート | ① 藤原文化センター~旧立田小学校:約7.0km 約8分 ② 藤原文化センター~八幡神社:約2.5km 約3分 ③ 八幡神社~旧立田小学校:約4.5km 約6分 | ① 旧穂原小学校~うみぼうず:約7.0km 約8分 ② 分散庁舎~うみぼうず:約2.3km 約3分 ③ 旧穂原小学校~分散庁舎:約5.2km 約6分 |
| 通信形態 | 上空電波(4G LTE) | |
| 飛行形態 | レベル3.5飛行 | |
| 輸送物 | 携行缶(燃料輸送を想定) | ペットボトル飲料 |
| 使用機体 | DJI FlyCart 30 | |