2025年12月11日、BlueArchとUMIAILEは、神奈川県および三和漁業協同組合城ヶ島支所と連携し、水上ドローン(ASV)と水中ドローン(ROV・AUV)を組み合わせた、船を使わない藻場観測手法の実証プロジェクトを開始したと発表した。
ブルーカーボンクレジット申請に必要な藻場被度データを陸上から遠隔で取得する手法として、2026年3月に城ヶ島の磯焼け対策で実施している天然ワカメ場のモニタリングにおいて実証を行い、その結果を2026年度のJブルーカーボンクレジット申請に活用する予定だ。
海藻が繁茂する藻場は、魚介類の産卵場や成育場として生態系に重要な役割を果たしており、近年は大気中のCO₂を吸収・貯留する「ブルーカーボン生態系」としても注目を集めている。しかし、地球温暖化の影響を受け、神奈川県内の藻場は1990年から2022年の間に約53.7%減少しており(神奈川県水産技術センター調査)、保全が急務となっている。
藻場の再生活動を支援する仕組みとして、吸収・貯留されたCO₂を取引可能なクレジットとして認証するブルーカーボンクレジット認証制度(Jブルークレジット)が期待されているが、申請には潜水士による手作業での測定が必要であり、普及の妨げとなっている。水中ドローンを利用した手法でも母船となる調査船が必要となり、数十万から数百万円規模の用船費・燃料費がかかるほか、運航に伴うCO₂排出は環境負荷につながる。
この取り組みでは、UMIAILEが開発する水上ドローンを船に代わる中継ノードとして、水上ドローンと水中ドローンの連携によって藻場の撮影・観測を完結させる手法の実証を行う。この手法により、操船技術を持たない人も藻場の測定作業が可能になる。
従来の測定手法では、水中ドローンから母船へ操縦信号や映像をケーブルで伝送するため、調査可能エリアが母船の位置から約100m以内に限定されていた。実証では、陸上と水上ドローン間の長距離無線通信により、水中ドローンの操縦を水上ドローン経由で行うことで、調査可能な範囲を半径1km以上まで大幅に拡大する。
水上ドローンを中継ノードとすることで、水中ドローンが撮影した映像をリアルタイムに陸上へ伝送。低軌道衛星通信(LEO)、モバイル通信(LTE/5G)、直接無線など複数の通信方式から最適なものを検証する。
水中ドローンには、海底との距離を検知して自動で衝突を回避する自律制御プログラムを搭載する。ドローンと操縦者の距離が離れることで衝突リスクが高まる懸念を補い、遠隔操作でも安定した観測を実現する。
三浦市・城ヶ島のワカメ場を実証フィールドとして、神奈川県水産技術センターによる技術評価を実施する。その後、Jブルークレジット申請を行う。
【実証の流れ】
| 2025年12月~2026年1月 | 水上ドローン・水中ドローン連携に向けた開発 通信規格や重量など、ソフト・ハード両面で具体的な内容を検討・開発。 |
| 2026年1~2月 | 水上ドローン・水中ドローン連携の実地試験 ハードウェア連携、映像伝送、遠隔操縦などを実海域で検証。 |
| 2026年3月 | 城ヶ島ワカメ場の本調査 城ヶ島のワカメ場で計測を行い、神奈川県水産技術センターが技術評価を実施。 |
| 2026年9月 | 実証で得た調査データを活用したJブルークレジット申請 |
