2025年11月10日、野村不動産を代表事業者とする、ANAホールディングス、SkyDrive、東日本旅客鉄道、エアロトヨタ、西武ホールディングス、日建設計のグループは、東京都「空飛ぶクルマ実装プロジェクト(Ⅰ期)」において、SkyDriveおよび協力事業者であるJoby Aviation(以下、Joby)の機体を活用した複数ユースケースでの実装に向けたプロジェクトを提案し、採択されたことを発表した。

 この事業では、SkyDriveとJobyそれぞれの機体特性を生かした複数のユースケースでの実装を目指し、離着陸場候補地の設置可能性の検討や整備、モックアップ展示・ポートの公開イベント等を通じた社会受容性の向上、2028年度以降の市街地での事業化を見据えた離着陸場候補地の選定などを予定している。

 東京都の空飛ぶクルマ実装プロジェクトでは、2030年の市街地への展開に向けた課題の解決・取り組みを推進しており、直近3か年を「第Ⅰ期官民共同事業」と位置づけ、「机上検討」「実証飛行」「プレ社会実装の推進」期間として商用運航の実現を目指している。

事業概念図(2025離着陸場設置可能性検討、2026実証飛行、2027プレ社会実装、2028市街地での実装)
事業概念図

 東京都では、2050年代に目指す東京のビジョンを実現するため、2035年に向けて取り組む政策を取りまとめた「2050東京戦略」において、空飛ぶクルマの社会実装に向けた「ロードマップの精緻化」「実施スキーム(実装プロジェクト)」を構築するとしており、2030年の市街地への実装を目指している。その実現には、社会受容性の向上や、空域管理などの技術的な課題の検討、都市計画との整合など、さまざまな課題がある。

 今回のプロジェクトでは、これらの課題を解決し、空飛ぶクルマの早期実装につなげるため、臨海部エリアや河川上エリアにおいて2026年度中の実証飛行の実施、2027年度中のプレ社会実装の実施を目指す。

【事業体制】 ※敬称略

代表事業者野村不動産
連携事業者・ANAホールディングス
・SkyDrive
・東日本旅客鉄道
・日建設計
・エアロトヨタ
・西武ホールディングス
協力事業者・Joby Aviation
・羽田みらい開発

【各社紹介】

 野村不動産は、2023年より東京都が主催する「東京ベイeSG プロジェクト 令和5(2023)年度先行プロジェクト」において、空飛ぶクルマ用浮体式ポートや、陸・海・空を連携させたマルチモーダルMaaSの実現に向けた取り組みを進めている。

 ANAホールディングスは、国内でのエアタクシーサービス提供に向け、Joby Aviationとの合弁会社設立の本格検討を2025年8月より開始。都市部を中心にエアタクシーサービスを開始し、将来的に100機以上の導入、首都圏をはじめとした日本全国への展開を目指している。

 SkyDriveは、愛知県豊田市を拠点に空飛ぶクルマを開発し、静岡県磐田市のスズキグループの工場で製造を開始している。官民協議会の構成員として制度設計にも関与し、2020年に公開有人飛行試験に成功、2025年には大阪・関西万博でデモフライトを実施した。2028年頃のサービス開始を目指して機体開発に取り組んでいる。

 東日本旅客鉄道は、鉄道を中心としたモビリティのイノベーションの1つとして、エアモビリティ事業の新規事業化を目指し、空飛ぶクルマの社会実装推進に取り組んでいる。

 日建設計は、バーティポートの設計をはじめ、エアモビリティを活用できる都市の段階的整備、ビジョンを研究、提案している。法令面でも、空の移動革命に向けた官民協議会構成員として、まちづくり、建築設計の視点から実装を支援している。

 エアロトヨタは、地理空間情報技術による「空間情報事業」と、ヘリコプターとビジネスジェット機を軸とした「航空事業」を展開している。

 西武ホールディングスは、空のモビリティの社会実装を通じて、顧客に新たな体験価値を提供できるようさまざまな取り組みを進めている。

 米国カリフォルニア州に本社を置くJoby Aviationは、電動式垂直離着陸機を開発する会社で、2026年にはドバイからエアモビリティサービスの提供を開始する予定である。静粛性を備え高速で拠点間をつなぐ空のモビリティとして、都市の混雑や渋滞の緩和、持続可能な交通手段として期待されている。カリフォルニア州のサンタクルーズ、サンカルロス、マリーナ、ワシントンDC、ドイツのミュンヘンにも拠点を広げ、現在の社員数は2,000人を超える。

 羽田みらい開発は、鹿島建設を代表企業とする9社が出資する事業会社で、大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」(以下、HICity)の開発・運営を行っている。空飛ぶクルマの実機展示、施設内での長期間に及ぶロボット実証事業、自動運転レベル4でのバス定常運行などの実績を有しており、今後も都市と先進技術の融合に向けた取り組みを推進するとしている。