2025年10月6日、SORABOTは、オフグリッド(※1)型ドローンポートを活用した遠隔自動操作による斜面監視の実証実験に協力したと発表した。この実証は、八千代エンジニヤリングが実施する能登半島輪島地区地すべり災害区域内の地すべり調査業務において、2025年8月21日から10月3日までの期間にわたり行ったものである。

※1 オフグリッド:電力会社の電力インフラなどとつながらず、独立して発電・蓄電した電力や、公共インフラ(水道、ガスなど)を自給自足で確保している状態。

左:実証実験の概要図、右:設置したドローンポート

 建設業界では、労働人口の減少や働き方改革への対応が急務となっており、ICT技術を活用した生産性の向上が求められている。特に、落石や崩落のリスクが伴う山間部や海上などの施工現場では、地域住民や作業員の安全確保と施工管理の効率化が課題となっている。現場の地形変化は、人による巡視やドローンにより取得したオルソ画像の目視比較で確認していたが、これらの方法は労力と時間を要し、落石の移動距離や土砂の移動量といった定量的な変化を把握することが困難であった。

 この実証実験では、商用電源や通信網が整備されていない山間部や海上などでも運用可能なオフグリッド型ドローンポートを活用し、遠隔自動操作による斜面安全監視を行うことで生産性を確保し、災害現場や砂防分野において目視外の地形変化の確認や定量的な変化を把握する技術を検証する。

実証実験の内容

 現場に常設したドローンポートから毎日定時にドローンを自動飛行させ、取得したデータをクラウド上でAIが自動的に比較・解析することで、遠隔地から斜面の状態を正確に把握する。

 現場にドローンポートを常設し、衛星通信によって通信環境を確保、ソーラーパネルとポータブルバッテリーを組み合わせることで電源がない環境でのドローン自動運用を可能にした。ドローンが安定稼働できるよう、ポート内の温度を最適化するシステムや、盗難対策用の監視カメラも備えている。これにより、電源確保が困難な山岳・砂防エリアでの土砂災害、火山の噴火予兆、海岸・海上の津波といったリスク監視や、河川巡視のような日常的な管理にも対応できる。

 この実験では、オルソ画像の比較に加え、地形を立体的に捉える点群データの差分解析を実施。点群差分解析では斜面に特化したプログラムを使用することで、微細な変化や崩落した土砂の体積(物量)も定量的に把握できる。また、地質・地盤技術者による専門的な分析により精度の高いリスク評価が可能となる。

 毎朝6時30分に遠隔自動操作による飛行を行い、ドローンがポートに戻ると即座にオルソ画像、点群、3Dメッシュモデルを自動で生成する。その後、オルソ画像は前日との差分をAIが自動で比較・解析。その結果を毎朝8時の朝礼で確認し、作業計画の策定やリスク評価に活用する。また、雨天時などで大きな変状を確認した際は、点群データを手動で点群差分解析することで、地形変化を詳細に把握できる。

写真:前日・当日の同じ場所のオルソ画像
地形変化をとらえたオルソ画像(上:前日、下:当日)。下図で落石が発生している。

実証実験の成果

 データに基づいた客観的なリスク評価と、それに基づく具体的なアクションプランの策定・実行が可能になるなど、現場の安全管理レベルが大幅に向上した。

  • 日次での安全確認プロセスを確立
     毎朝の自動解析により、前日との地形差分を関係者が迅速に共有。その日の作業計画に潜むリスクを未然に洗い出し、安全性を高めることができた。
  • 抜本的な業務効率の向上
     これまで現場に赴いて行っていた巡視や立ち会いの多くを遠隔で代替可能となり、大幅な時間の削減と業務効率の向上を実現。
  • データに基づく迅速な安全対策の実現
     実証期間中に実際に落石を検知した際には、3Dデータで崩落箇所と規模を正確に共有。関係者間の迅速な合意形成を促し、大型土のうの設置といった具体的な安全対策に直結させることができた。

 今後、この実証実験で確立したワークフローの完全自動化を目指し、ドローンが取得した点群データの差分解析を即座に自動で行う仕組みを検討するとしている。

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