2025年10月1日、bestatは、同社が提供するクラウドサービス「3D.Core」を、IHIインフラシステムが鋼橋の保守・補修業務のデジタル化・効率化を目的に導入したと発表した。

 同サービスでは、スマートフォンや360度カメラ・ドローンのカメラ等で撮影したデータをもとに、既設鋼橋の保守・補修の基本計画に必要な3Dデータを生成する。データ読み込みの手作業や高スペックなPCは必要なく、オフィスPCで閲覧・活用が可能。例えば、当て板補強の施工性の確認をしたい場合は、撮影後データをアップロードするだけで、AIが自動でデータを準備し、数時間後には基本計画を開始できる。

 こうした迅速で簡易な3Dデータ活用により、社内や現場のエンジニアが基本計画段階から3次元の空間で検討業務が可能になり、業務効率・生産性の向上が期待される。

各箇所の数値が表示された鋼橋の桁端部の3Dデータ
3D.Coreで生成した鋼橋の桁端部(サンプル)で、細部を計測する様子

 日本のインフラ設備の老朽化が急速に進む中、土木分野の専門家は減少し、作業員の人材確保も困難な状況にある。補修プロセスには大掛かりな作業も多く、現地での調査から基本計画の立案までに多大な工数がかかるだけでなく、鋼橋補修には関係自治体や地域住民、発注主、施工業者など多様なステークホルダーとの調整も必要で、それぞれに合わせた異なる説明資料(3Dデータ)を個別に作成することが求められる。また、案件受注前の調査段階では高額な3D測量は導入しにくいという課題があった。

写真:鋼橋の各箇所に示された検討ポイント
鋼橋の保守・補修作業前の検討ポイント例(写真)

 3D.Coreは、エンジニアがスマートフォンや360度カメラ、ドローンのカメラ等で撮影したデータをアップロードすると翌朝には当て板補修の施工性の確認、補修塗装計画、足場計画の作成に必要な3Dデータができあがる。これにより、これまで最大4、5日を要していたデータ準備期間を半日に削減する。

 この3Dデータを中間ファイルに変換して3D CADへ取り込んだり、VRアプリに直結させて閲覧・活用したりすることが可能。管理画面上で距離計測や自由視点での閲覧・操作、データ不要部分の削除等の編集も可能で、全ての作業がオフィスPCで完結する。従来は案件受注後に行っていた3Dデータの生成・活用を、受注前に工数負荷少なく実施できる。

 また、施主や住民への工事概要説明に3Dイメージを活用することで理解を促進し、コミュニケーションを円滑化する。電話会議でも、3Dデータを画面共有することで、リモートで問題点や作業手順を確認できる。

 bestatは、鋼橋の保守・補修プロセスの基本設計や足場計画だけでなく、保守・補修の詳細計画といった多くのシーンでの活用を目指すとしている。

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