2025年2月12日、Liberaware(以下、リベラウェア)は、大強度陽子加速器施設(以下、J-PARC)において狭小空間点検ドローン「IBIS2」の活用プロジェクトを開始したことを発表した。日本原子力研究開発機構(以下、JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK)が運営するJ-PARCのさまざまな設備に対する点検業務の安全・効率性強化を目指す。

写真:J-PARCの航空写真
J-PARC

 J-PARCは、素粒子物理、原子核物理、物質科学、生命科学、原子力など幅広い分野の世界最先端研究を行うための陽子加速器群と実験施設群の呼称。JAEAとKEKが共同運営しており、研究機関や企業が集まる茨城県東海村に65万m²の広大な敷地を有している。

 2001年に建設着手、2009年に本格稼働を開始。稼働後20年を経過する設備等も増えており、安全性に配慮した管理が求められるため、ドローン等の技術やデジタル技術の活用ニーズが高まっている。一方、安全管理上人が進入できない、人が進入するには危険な箇所も多く、事故等のリスクがある。

 今回のプロジェクトは、これらの設備を対象に、安全で効率的なドローンによる検査手法を確立することを目的としている。

プロジェクト概要

 各施設の点検時、ドローンが撮影した映像を活用し、従来の足場設置や人力による点検では危険かつ到達が難しい場所の点検を行う。これにより、点検業務に伴うリスクやコストを削減し、安全性と作業効率を大幅に向上させる。この件を発展させた議論として、J-PARC内の、LINAC(※1)・MLF(※2)・共同溝を対象に、点検作業をドローン等により自動化することについて予備的な検討も開始した。

※1 LINAC(Liner Accelerator):J-PARC加速器の始まりとなる直線型加速器。

※2 MLF(Materials Life Science Experimental Facility):世界最高強度の陽子ビームを利用して基礎科学から応用研究まで幅広い分野の研究を行っている物質・生命科学実験施設。