2025年8月7日、Terra Drone(以下、テラドローン)は、同社子会社でベルギーに拠点を置く運航管理システム(UTM)プロバイダーのUnifly(以下、ユニフライ)が、ドローンと有人機の安全な空域共有および効率的な運用を目指す「BURDIプロジェクト」の一環として、ベルギー北部・ケンペン地域で行われた医療物資のドローン配送に関する実証運航において自社開発のUTMプラットフォームを提供し、技術支援を行ったことを発表した。
BURDIプロジェクトは、欧州連合(EU)および欧州の共同研究機関であるSESAR Joint Undertaking(※1)が共同出資する、ベルギーとオランダを対象とした欧州共同プロジェクト。U-space(※2)に基づいた運航ルールや空域管理の枠組みを現場レベルで実装し、目視外飛行(BVLOS)を含むドローンと有人機の共存を目指している。
プロジェクトでは、医療輸送、インフラ点検、公共安全支援など、さまざまなユースケースを想定しており、ベルギー国営の航空管制機関であるskeyesを中心に18の企業・団体が参画している。ユニフライは、プロジェクトの中核技術であるUTMプラットフォームを提供している。
欧州の地方都市や郊外地域では、医療拠点間の距離が長く、交通渋滞や地理的な制約により陸路による医療物資の緊急配送に時間がかかるケースが少なくない。特に救命医療や重症患者への対応では、より迅速で確実な配送手段の確保が求められている。
実証では、「医療物資の緊急配送」という公共性の高いユースケースを通じて、ドローンが既存の自動車配送と比べて、迅速かつ効率的に医療物資を届けられるかを検証するとともに、U-spaceの現場実装における有効性を確認する。
※1 SESAR Joint Undertaking:欧州の航空管制の近代化プログラム「SESAR」の実行を目的とした、政府機関や企業が参加する共同研究機関。
※2 U-space:欧州のドローンや空飛ぶクルマなど次世代エアモビリティ実装のための規制の枠組みまでを含めた運航管理に関する概念。
実証概要
都市部から離れた地方都市エリアにあり、医療拠点間の距離や陸路配送の制約といった課題を抱えるベルギー北部・ケンペン地域で実証を行った。
同地域の主要医療機関であるAZ Turnhoutの2つの医療拠点間において、2025年8月1日から5日間にわたり、薬剤や検体などの医療用緊急貨物をドローンで配送した。ドローンは目視外飛行で運航し、操縦は英国・バッキンガムシャーにあるリモート運航センターから遠隔で実施した。
今回の実証は、実際の医療現場でドローンによる緊急配送を継続的に運用したほか、国外に位置するリモート運航センターからの遠隔操縦についても関係当局から正式な承認を得た上で実施するなど、先進的で希少性の高い取り組みとなった。また、U-spaceの現場実装を見据えた運用により、欧州域内でも数少ない実運用に近いケースの一つと位置付けられている。
ユニフライはUTMプラットフォームを提供し、飛行申請から承認、ルート管理、リアルタイムの航空交通監視までを一元的に行うことで、ドローンと有人機の安全な共存や医療物資の配送を支援した。同社のUTMは、欧州のU-spaceに準拠して設計されており、飛行計画の承認、立入禁止空域への侵入防止、他の航空機との衝突回避、天候変化への警告、緊急停止支援といった機能により、安全で効率的な空域管理を実現した。
この実証は、ベルギーでの常設型ドローン配送ネットワーク構築に向けた第一歩とされている。将来的には、ベルギー北部・ケンペン地域の主要病院に無人運航型のドローンステーションを設置し、24時間・365日体制で運用することを目指す。
