2024年7月13日、デジタルカレッジKAGAは、ドローンや生成AIなど複数の手法を活用して温泉デジタルアーカイブを組成するサービスの提供を開始したことを発表した。
高額な機材を使わず、現場で手軽に実施できる作業で迅速かつ精密に温泉施設のデジタルアーカイブを組成し、温泉の魅力をデジタル化する。
モデルケースとして、加賀温泉郷山代古総湯を対象とした「古総湯プロジェクト」を実施。同プロジェクトでは、ドローンの自動航行による撮影と汎用機器(スマートフォン等)を用いた外部構造データの収集を行い、生成AIを活用してデータの欠損を補完した。この方法により、高精度な建物の三次元モデルを迅速に作成し、施設内部は全天球カメラやスマートフォンを活用してウォークスルーの作成やフォトグラメトリを実施した。
汎用ドローンと撮影・センシング機材を柔軟に組み合わせることが可能。古総湯プロジェクトで使用したドローンは、オープンソースの自動化が可能なエンルート製「Zion QC730」。ArduPilot Mission Plannerを使用した自動化プログラムにより完全自動ミッションで撮影を実施し、ソニーα6000カメラにより高精細な画像を取得した。飛行時間は約5分。
施設内のデジタルアーカイブ作成では、DJIのAVATAシリーズや4Kカメラを搭載したマイクロドローン、屋内用スマートフォン搭載ドローン、ローバー型移動体を使用して撮影を行う。加賀市内外の運用パートナーと連携し、汎用機材を使用して温泉施設の業務の合間に実施する。撮影したデータは解析のために整理し、他の手法で取得したデータと統合する。
ドローンで撮影できない場所は、スマートフォンなどの汎用機器と生成AIを活用する。自由視点の画像生成を行いデータを補完することで建物全体を精密に再現する。古総湯プロジェクトでの補完データ撮影時間は30分以内で、施設の休息時間内に迅速に作業を完了できる。
施設内の撮影は、全天球カメラ(古総湯プロジェクトではInsta360 X3)を利用する。ウォークスルーツールとしての活用だけでなく、フォトグラメトリ技術を用いて解析し、特徴点の位置関係やパースの変化を利用して対象物の形状を三次元の点群モデルに変換。ドローン撮影と組み合わせることで、内外のデータの精度を向上させる。
三次元に点群モデル化したデータは、メタバースへの展開も可能。また、衛星から取得した各種データや、国土交通省のPlateauに集約された都市の三次元データと組み合わせることで、都市計画のシミュレーションや経年による施設内外の環境比較に活用できる。
また、デジタルカレッジKAGAは脳波による温泉効能のデジタル化の予備試験を行っており、泉質のバランスの違いが人体に与える効能の微妙な違いを可視化することで、新たな価値の提供を目指すとしている。
実際に運用中の施設に対する現場作業は時間が限られるため、ミッションを速やかに実施し、補完的な技術と組み合わせることで迅速かつ精緻に施設の全体像を把握することが可能になる。施設のデジタルアーカイブを適切なデータフォーマットで保存することで、将来における施設の維持管理やデザイン等に活用できる。また、三次元データ化しておくことでメタバース等への導入が容易になる。