2022年6月24日、北海道大学 大学院情報科学研究院と国土交通省 北海道開発局は、インフラ管理のイノベーションを進めるため連携協定を締結した。

 北海道開発分野における社会資本整備や維持管理、防災対策等について、両者の連携による研究・技術開発や、高度な専門的知識を有する人材の育成を進める。インフラ管理の効率化などの地域課題を、情報科学とインフラ管理の融合によって解決し、北海道固有の地方創生を目指す。

 この連携により、道路標識など倒壊すると大きな被害が生じる道路附属物の点検にAIやドローンを導入し、点検の効率化や遠隔点検を可能にする研究を進めるとしている。このほか、北海道大学 大学院情報科学研究院が実施する研究プロジェクトへの北海道開発局の参画や、北海道開発に対する助言などの連携を進める。

北海道開発局の道路管理効率化への研究テーマ

道路附属物点検

【課題の分野と改善の方向性課題認識】

 道路附属物の現状把握、安全・円滑な国道機能と道路交通の確保、沿道や第三者への被害防止を図るため、道路附属物の効率的な維持管理に必要な基礎資料を得ることを目的として、「道路付属物点検」が実施されている。多数存在する附属物を一つ一つ点検するというマンパワーが要求される業務特性に加え、損傷を評価・診断する知見や経験、データの集約・管理と修繕の優先順位付けなどのデータ管理スキルを要する業務である。

 担い手が減少する中、効率化や省力化が求められるが、そのためには業務の各過程を丁寧に区分し、細やかに課題の抽出や改善の積み重ねが必要となる。2020年の社会資本メンテナンス戦略小委員会においても、取り組むべき項目の課題として、点検・補修等の維持管理情報に係るデータの記録・蓄積・共有化が提起された。

 具体的には、1)高所作業、遠望目視・近接目視など現地調査の効率化、2)損傷評価・診断に関する判断の均一性向上、3)点検結果データの集約や管理および共通プラットフォーム構築、4)修繕計画策定支援、5)ドローンの活用や遠隔管理 などが業務効率化の観点として考えられる。このうち特に2、3、5についてはデータサイエンスとの親和性が高いと考えられる。

【対応1:データ記録のプラットフォーム構築】

 開発建設部(全道各地の出先機関)ごと、あるいは業務ごとに異なるデータの記録を統一する共通プラットフォームの構築を図る。具体的には、GPSの位置情報、撮影データ、過年度の履歴、道路台帳データ等を連動し、点検からデータベース管理、修繕計画の策定から工事まで一気通貫のデータ管理と共有を実現する。
 これにより、業務ごとの点検精度のばらつき防止と維持管理水準の向上による業務の効率化を目指す。

【対応2:AIによる診断・評価の均一化や効率化】

 評価基準は統一であるものの、実際の評価は各業務の担当者に委ねられており、必ずしも統一的な評価結果を得ることは難しく、この結果に基づく修繕計画も開発建設部や事務所の横断的比較は困難である。
 過年度の点検結果を教師データとして深層学習を行い、個別の点検データをAIにより診断・評価。技術者の支援ツールを開発する。また、診断作業の省力化と判断のばらつきを減らし、効率的な点検業務と修繕計画の策定を目指す。さらに、附属物の3次元モデル上でデータ管理を行い、よりリアルな評価・診断や損傷傾向の分析、遠隔管理を志向する。